□月 ●日  No1027 幻想の世界と家族


レンコがお客の名前で混乱している。 
一世帯に沢山の人が住んでいて、その一部は丁稚奉公にでていたりしていて色々大変らしい。
分からなかったら近所に聞いてみるのがよいと伝えておく。


幻想郷の一般家庭について言及してみよう。
とにかく言えるのは兄弟が多いと言うことだ。 テレビで子だくさんの家庭の特集が組まれることがあるが
まさにそういった光景が幻想郷ではそこかしこで見られる。
何故こんなに兄弟が多いのか、つまるところ大人になる子供がそこまで多くないからだ。
病気だったり事故だったり、それは不幸という言葉で片付けることができるだろう。
娯楽が少なくて子だくさんというのもあるのかも知れない。
兄弟も多いがたまに親とは似てもにつかない子供が交じる場合がある。 引き取っている場合もあるが
いろいろ顕界では考えられない事情もあるようである。


そういうことで、幻想郷の子供達というのは顕界と違って独立心が高い傾向がある。
兄弟が多いのだから当然のことだ。 年長者が年下を見るのは当たり前であり、よほどのお金持ちでなければ
親に依存した生活を送る者はまずいないと言って良い。


ポイントはこの考えは妖怪たちにも適用されるということだ。
妖怪たちが個別の存在として独立心が高いのはこの社会システムに依るところが大きい。
独立するのが当然の社会にいるのだから当然なのである。
一方で顕界の妖怪は横の繋がりがとても強い。 その証拠に外の世界のシステムを取り入れている種族
天狗や河童達は高度に組織化されているのだ。


幻想郷にニートはまずいないと言っていいだろう。永遠亭の姫でさえ、実は結構出歩いている。
ただ、幻想郷の基準では引きこもっているように見えるのだ。 
生活するためには引きこもっているわけにはいかないから当然である。 


しかしこうやってみてみると、幻想郷の方が本当は常識的で本来居る顕界の方が
歪な状況に見えるのは気のせいだろうか。 幻想郷は常識が通用しない筈なのに
人間の本来の家族構成に照らし合わせれば、幻想郷の方がむしろ理に適っているように見えるのは気のせいだろうか。
不思議なものだが、全ては単純ではないと言うことだろう。


レンコやメリーたちはどうだろうか。
聞けば二人とも結構、独立心旺盛ではある。 それでもそれぞれ実家はあるし繋がりが切れているわけではない。


幻想郷の姿が本来の姿なのか。 彼らの生活を見るにつけそんな疑問が湧いてくるのである。