衛星組が帰還
幻想郷のまわりをくるくる回っている宇宙ステーションにいる
数機のるーこと軍団の入れ替え作業である。
この衛星にはひとつのねらいがある。
博麗大結界における人間の心のケアをこの宇宙ステーションを通じて
どう行うかを実験するというものだ。
るーことのメモリデータはすぐに解析に回され、ストレスなどが研究されることになっている。
こうした実験は過去何度かに渡って隙間妖怪の手動のもと行われてきたことを
ボスからの話で知った。
幻想郷は基本的に閉鎖空間である。
結界の大きさは可変であり、ある程度の広さもあるが
閉鎖空間における人間の心をどういう風にケアするかそれが一つの命題になった。
特に閉鎖空間であるという閉塞感をなくすための手段についてはかなり気を配っている。
たとえば初期の博麗大結界では特に麻薬の流入についてかなりの警戒感があった。
博麗大結界が現代の姿になった当時、隣国である「清」は今まさに阿片が流行していた。
麻薬は幻想の世界を広めるには有利であったが、当時まだかなり勢力を持っていた
妖怪たちを押さえるためには邪魔だったと言える。
そこで、いくつかの手段が試みられた。
幻想郷は四季がある温帯気候を選択し、環境の変動が激しいものとする。
多くの妖怪が集う幻想郷では本来どの気候でも問題はないのだが
環境の変動を大きくすることで、人間達にも妖怪たちにも如何ともし難い環境の変化が
存在するようルール付けされた。
気候の大きなうねりの前ではヴァンパイアの力も天狗の素早さも、鬼達の能力も意味がない。
すると諦め(明め)という発想が生まれると隙間妖怪は言う。
なってしまうものは仕方ない。 天変地異は仕方ない。 だから皆が助け合おうと言う理屈だ。
この試みは大成功した。
この幻想郷における人間の心に関するノウハウは長い間ベールに包まれることになった。
お陰でちょっとした副作用が起きてしまったらしい。
人間が月に到達したとき、科学者は月を足がかりに火星への到達を目指していた。
月人たちが大騒ぎしている間、人間の心は月ではなく火星へ興味を示していたわけだ。
そこで火星への到達計画が実行されようとしたわけだが
そこで初めて閉鎖空間における人間の心の問題が浮き彫りになってしまった。
露西亜の閉鎖空間実験によるものだ、ということになっている。
朝倉に言わせると閉鎖空間実験が必要という考え方は、幻想郷立ち上げの時に
顕界に残った妖怪たちが提唱したものだということだった。
もちろん大結界生成時のノウハウをそのまま提供すればよかったのだが
それをやると今度は博麗大結界の存在を世間に知らしめることになる。
だから人間による実験結果が必要だったという。
さてさて、宇宙ステーションにずっといたるーこと達はどうだったのだろう。
彼女たちの心はやはり閉鎖空間で問題が起こったのだろうか。
結論から言えば、マイウェイな性格は閉鎖空間にいてもどうでもいい話だったようだ。
幻想郷でマイウェイな連中が幅をきかせている理由が何となく理解できた。
私がマイウェイな性格は大切ですよねと朝倉に言ったら
お前がマイウェイだと言われた。
とりあえず褒め言葉として受け止めておくことにした。