□月 ●日  No828 増え続ける月間貿易情勢


幻想郷と月の都との物資輸送ラインを構築して以来、取扱量は増加の一途をたどっている。
博麗大結界の外物資だけに頼らないシステムはボスの悲願だったらしい。
博麗大結界の外では基本的に社会は比較的早く移り変わる。
為政者は数年単位で変ってしまうし、その都度方針も色々変ってしまう。
万が一愚かな為政者が幻想郷をビジネスとして利用しだしたらやはり危険なことになる。
だから幻想郷の中である程度の食糧や物資の自給が行われることが必要だったといえる。


例の神社にある核融合炉プロジェクトもそうした流れを汲み取ったカミが起こしたものだった。
色々な思惑で頓挫したとはいえ、考え方はボスとあまり変っていないらしい。


月の都から運ばれるのは概ね食べ物ばかりだ。
一方で月の都へは珍しい美術品や幻想郷の品々が運ばれているらしい。
とにかく冬場で飢えなくなったというのは地味に大きい。


しかし月からやってくる食べ物は色々と問題も多い。
実は魔除けなどに使える食べ物ばかりなのだ。
その筆頭はやはり桃で、退魔性能が極めて高い。 鬼退治や妖怪に投げつければそれなりの
威力がある。 幻想郷のパイナップル(手榴弾)みたいなものだ。
従って人間相手にしか売れないのが玉に瑕だったりする。


私もいくつか食してみたが、顕界で売ってる物とあまりかわらない。
桃もかなり甘くてそのまま顕界で売ってもそこそこ売れそうである。
餅の味についてもあまり変らなかった。 
水の味がまるで高性能な浄水器を通したような代物だったことが気になったくらいだ。
その味だってコーヒーのチェーン店にいけば飲める内容である。
ただ、一般的に濃い味の傾向がある。
実は重力差によって味の感じ方が違うかららしい。 気をつけないと
塩分の採りすぎになりそうだ。 気をつけないといけない。
逆に月の調味料は薄めて使うのがセオリーのようだ。
だいたいくどい。 まるで米帝のケーキのようである。


品物の流通が増えてきて色々大変なのは香霖だ。
月の都から流入してきたアイテムの鑑定依頼も増えているらしい。
お金は入ってくるのだが休みがとれなくて難儀しているようだ。
もっとも幻想郷の仕事ペースなので我々が住んでいるところと一緒にするとおかしなことになる。


このまま全てが幻想郷だけで回る日が来るのだろうか。
ボスはそれはあり得ないと言っていた。
幻想郷の認識地域が増えればうちの会社の存在意義に関わると思うのだが
どうだろうか。
ボスは不適な笑みを浮かべているが、いつか聞いてみたいと思う。