□月 ●日  No829 魔法使いが雇えない理由


いつも思うのだが、幻想郷の仕事をするに当ってはその手の知識を多く持つ人間を
雇った方が効率がいいと思う。
例えば現役の魔法使い。 スペルカードの研究員の話では魔法使いのための組織というものが
本当にあって、顕界にありながら魔法の研究が日夜行われているらしい。


うちの会社でもそういう魔法使いを雇ったらどうだろうと朝倉に話したら
使えないから入れないと言われた。
実は過去にも現役の魔法使いや魔法使いの卵を雇い入れてはいたらしい。
しかし、結果的には他部署へ配属するしか無くなったそうだ。


私は顕界に住んでいる魔法使いがそこまで遅れをとっているとは思えない。
事実魔法使いの組織の一部は列車を使わなくても直接幻想郷へとアクセスする方法を
見いだしていると聞く。 もしかすると朝倉の基準だと駄目なのかもしれない。
そう思っていた。
しかし、社食で人事部の人と話をしたら色々な疑問が氷解した。


実はうちの会社は魔法使いにあまり給料を出せないらしいのだ。
うちの会社では社員の数割程度が妖怪で占められている。
彼らは当然のごとく下手な魔法使いより派も遙かに強い。
だが待遇はと言うと一般社員とあまり変らない。


もし使える魔法使いを確保しようとすると、どうしてもそれなりのお金を積む羽目になる。
そんな金があれば妖怪たちを雇い入れた方が効率がいい。
一方で使える魔法使いは、霊能局などに行ってることが多い。
あそこはかなり給料がいいという。 また民間企業である我々と違って
親方日の丸の旗を掲げている点もとても重要である。


一方で霊能局は人材として妖怪を雇用するノウハウが少ない。
あっちはあっちで法令を遵守できる、言葉が通じるなど諸条件が多く妖怪を雇わないと
いけない事情がある。 色々ややこしいようだ。
そこで現役魔法使いの雇用に力を入れるという現実がある。
魔法使い畑では櫻崎当たりがそうだと言われる。


ふと考えた。
朝倉は幻想郷最強の魔法使いと言われる。 彼女に師事してもらって魔法を学び
その能力で霊能局へ転職したら給料が倍くらいになるのではないかと。
冗談半分で朝倉に頼んだら、お前は一番魔法と縁遠いと言われた。
少し泣きたくなる。


だがこうも付け加えてくれた。
あなたの場合は魔法を笑いとばすことができると言うのである。
シニカルな発想を持つことこそ魔法に対して強大な耐性を得ることができるというのである。
なんだか褒められたのか、けなされたのか分からない一言だった。