□月 ●日  No1239 彼女なりの気配り


妖怪の中にはこいつと引き合わせてはいけないというような相性の悪い妖怪が必ず存在する。 
その中でもかなり気を配らないといけないのが、電磁波妖怪「永江衣玖」だろう。
一説ではもともと月の都と天界を根城に行動しているそうで
兎との通信の増幅器としても利用されているという。 
彼女は地中の微弱な電波を読むことで地震発生の予知が可能だが、同時に自身も
強力な電磁波を発することができる。


朝倉の話によれば、彼女の持つ空気を読む程度の能力というのは後天的なもので
正確な表現をさせて貰えば「空気を読むしかない」につきるという。
彼女の本来の能力は電磁波を発生させる能力であるのだが、この能力は
妖怪や相手にとっては致命的な影響を与えてしまうものらしい。


ではどんな妖怪に影響を与えるのか、調べるとそんなバカなという結果になっている。
まずは夜雀である。 一見すると全く影響を受けないように見えるが、方向感覚が壊れてしまうらしい。
ただし、これは慣れの問題もあるそうで一定時間接していればそれほど問題ではないらしい。


方向感覚が壊れると言えば、虫妖怪たちも同じとが言える。 ヤマメ女史や虫妖怪である
リグル・ナイトバグがそれにあたる。 ヤマメ女史はうちとの関係も強いせいか
そういう時は素直にGPS受信機を使う。 電磁波如きで仕事を休めないとも言えるが、
地中電磁波もバカにならないという話だとか。


もっと困る妖怪もいる。 能力を封じられるケースだ。
これにはナズ軍曹が該当する。彼女の能力であるダウジングは電磁波解読によって生み出されるものだ。
よくコードをかじるネズミがいるがそれと同じようなことが起こるのだという。


属性が変わってしまう妖怪もいる。
一輪嬢と一緒に行動している雲山がそうだ。 時代親父が雷親父になり制御困難となる。
わざと制御困難にして対空防御に使うことができると言う話なので一概に悪いとはいえない。


致命的な妖怪と言えば水棲妖怪である。
代表的な存在は大ナマズだ。地震発生の原因と言われる大ナマズも電磁波解読型だが
強力な電磁波を浴びると最悪死んでしまうらしい。 個体数が多いからあまり問題にならないと
いうのだがそれでも引き合わせないのが無難だ。


このように永江衣玖はあまりに多くの妖怪と相性が悪いのである。
自分の存在で影響を受ける妖怪が多すぎれば周辺の状況を調べるようになるのは当然だ。
まさに空気を読む能力と言うよりは「空気を読むしかない」につきるのである。


彼女と滅多に遭遇しないのは彼女なりの気配りだと言うことを理解しないといけないだろう。