□月 ●日  No1250 存在を主張したいひとたち

 

当たり前であるが幻想郷に妖怪がいるように外の世界すなわち顕界にも妖怪は存在する。
普段は身を隠しているケースが多いが、中には人間の生活に溶け込もうと努力したり、
ショービジネスの世界に飛び込んだり、妖怪の力を十二分に発揮して巨万の富を得たり、はてまた
ホームレスのような生活をしている妖怪も存在している。


妖怪も漫画などのプロパガンダの影響で世間的に知られつつあり、
仮に妖怪の能力を発揮しても社会的混乱が起こりにくくなっている。
酷いケースでは映画撮影で、特殊効果の代わりに妖怪の能力を見せるという
撮影方法まで確立しているのだという。
世も末だ。


久方ぶりに霊能局の小兎姫からお手伝いしてくれと言われて見せられたものは
最近はやりの動画を取り扱うネットサイトであった。
ここで最近妖怪が自分を撮影して、人気を博しているという。
それ自体は別に悪くはない。 しかし妖怪としての力を使っているとなれば
話は別だ。 一応、専用の遮蔽装置を使って映像を見たのだが、所謂
瞳術を使った形跡が至る所に見られるのである。


相手の手口を理解した上で対抗措置をとれば実は問題はない。
同じような術といえば、ヴァンパイアの主人がもつ能力がそれにあたる。
運命を操る能力の一部手口は瞳術で再現可能とも言われる。


さて、いくら人間以外の知り合いが増えているからといって
それを前提に聴取するのは勘弁して欲しい。
私はあくまで人間であり、本来なら普通の人間としてのコネクションしか持っていないのだ。
あれば便利だろうが能力があるわけではないのである。
もらえる金一封がなければすぐにでもやめているところだ。


しかしながら妖怪が自分の能力をいかんなく発揮しているのに特殊効果だと言われるのは
なんとなく寂しいことだと思う。 
この妖怪はもしかすると自分の能力をどこかに残しておきたいと思っているのだろうか。
結局この妖怪は特定されて幻想郷行きになるというのだが、色々複雑な気分にさせられる日である。
ヴァンパイア主人の瞳術を用いて、能力のすごさを証明したいという欲求に駆られたのは
ちょっとした秘密である。