□月 ●日  No1308 幻想郷へようこそ


新人引き連れて初の幻想郷ツアー。
最初は風景の美しさや空飛ぶ少女たちに物珍しさも手伝って大興奮するのだが
すぐに文明から隔絶された不便さをもろに感じて、最後には疲労で口数も減る。
この辺の反応は外の世界からきた所謂外来人にとって毎度のことである。


外の世界の人間が現地の妖怪に会って仲良くなるってことはまずない。
そもそも話しに応じてすらくれないだろう。
博麗の巫女の話しに応じるのは、どちらかというと道中で妖精たちを
叩きのめしているからに他ならない。あれだけ弾幕をばらまいて大迷惑を
振りまけば話だって応じるしかない。
それは戦闘回避だったり、相手の戦闘力に対する興味である。


それでも私がここに入ったときよりは大分マシだ。
私なんか、八雲商事に招聘されたばかりの朝倉が幻想郷を案内したから
禄でもなかった。 まず大半の妖怪が隠れている。
実験台にされるのは嫌だと言って震えている妖精までいた。
あの当時は凄い魔法使いだと思ったものだったがそれが間違いだと気づくのに
そう時間は掛からなかった。


おかげで本来なら収拾つかないような格上の妖怪と知り合えたのだから
有り難いと思わないといけないだろう。 
デスマシン妹君とか、放蕩妖怪とか触るくらいならプルトニウム素手で触った方が
マシな危険妖怪に舐められないで済んでいるのはなにより有り難いと思わないと駄目だ。


新人さんのスケジュールとしては、まずは香霖などの一般的な人物との接触から始まり
河童や鬼、天狗たちと接触する。 鬼たちは美人が多いのでこの地点で男性社員は大興奮し
女性社員とわだかまりができる。ここをフォローすることができるかどうかが勝負の鍵だ。
個人的に敢えて私見を挟まず、事務的に紹介するくらいが丁度良いように思う。


質問としてあがるのは、「我々も空を飛べるのか」だが、飛べたら私が既に飛んでると言うと
概ね納得してもらえる。実際飛べたとしても会社としては飛行での移動は推奨していない。
墜落して大怪我でもされたら労災認定もさることながら労基が乗り出してくるからだ。
連中は幻想郷のことを知らないから大問題になってしまう。


今の新入社員は力で押さえつけても納得してもらえない。
ロジカルに理由を述べて納得してもらわないと指示に応じないケースが多い。
論より証拠を見せたいのはやまやまだが、それを見せてショックを受けても困る。
しばらくは様子をみながら深度を深くしていかないと駄目だろうと思う。