□月 ●日  No1372 潔癖妖怪


ムラサ船長の散髪を目にする。
幽霊が散髪とは少々ナンセンスに見えるのだが、元々舟幽霊は長髪が多いらしく
短く切ってもまた伸びてしまうと言うのが、ヴィヴィットの話である。
彼女の散髪もかなりの頻度で行っているという。


ムラサ船長は舟幽霊の中では珍しく潔癖で知られる。
一輪嬢がムラサ船長の散髪頻度が多いと言っていた覚えがある。
お風呂も顕界の人間並の頻度で入ることで知られている。
一般的に舟幽霊は不潔でにおいがきついことで知られているのだが
彼女を一目見て認識を改めたと言う。


これは仕方がない部分があって、かつての船乗りにとって塩気のない水は貴重品であり
身体を洗うのが難しかったからである。
彼女がセーラー服を着るのは汚れた髪が直接衣服に付くのを防ぐ機構があるからである。
船乗りとしての謂われが必要で服を着ているのではなくそこに合理的理由が存在する。


ネット転載天狗に言わせるとかつてのムラサ船長は長髪で髪はぼさぼさだったらしい。
紫外線と潮風で髪が傷んでしまうのだろうと思われる。
髪は後ろで縛りどうにか誤魔化していたのだという。
そんな彼女が大師様に出会って趣旨替えするに当たり、真っ先に行ったのが
今までの自分との決別を兼ねた断髪だったのではないかと言うのである。
実際のところは不潔だから髪を切って身を奇麗になさいと大師様に言われたというのが
ところであろうか。


ムラサ船長は大師様の言いつけを忠実に守った。
結果、舟幽霊では珍しく、北白河も舌を巻くほどの潔癖になったと言える。
封じられていた時も、結界内に身体を奇麗にする機構を付けさせたという話もあるほどだ。
聖輦船にもシャワー室が完備されているという。
遊覧船に乗った妖精達が噂していた。


ちなみに、彼女にシャンプーやリンスや紫外線カットのクリームなどをあげると
大変喜ばれる。 布教されるの覚悟で付き合いたい方は是非。
決して、彼女からの発注内容が少々予算オーバーだからと言うわけではない。