□月 ●日  No1399 こちとら営業


霊能局に配属された新人さんから何故我々が、霊能局での活動に参加しているのかと尋ねられる。
一応、対妖怪アドバイザーとしての参加であるが霊能局の面子も妖怪の知識については
十分持っていると言って間違いない。 そもそも私たちが霊能局の活動に参加しているのは
もっと別の理由がある。


幻想郷において八雲商事は妖怪なら大体知っていると言って良いほどの高い知名度を誇っている。
幻想郷に居る妖怪達は基本スタンドアロンで活動しており横の繋がりは驚くほど希薄である。
妖怪同士の口コミで八雲商事を知ってもらうことは難しいだろう。
そこで、外の世界にいる段階から妖怪達に八雲商事を知ってもらう必要がある。


つまるところ霊能局に同行するのは営業活動も兼ねているのである。
妖怪の中には不便な暮らしを強いられる幻想郷に行くのを拒む者も少なくない。
空を飛ぶくらいなら電車や乗用車に乗った方マシと思っている妖怪はごまんといる。
顕界の便利さを考えれば無理に幻想郷に行く必要なんて無いのかも知れない。
そんな彼らにとってバックアップ組織の存在は幻想郷に旅立つ上の恐怖を拭い去ってくれるものである。


我々としても幻想郷にやってくる予定の妖怪の性格を先に把握できるメリットがある。
かつては妖怪退治ということで、戦闘に参加して犠牲を払いながら幻想郷送りしていた時期があるそうだから
隔世の感すら有るだろう。


幻想郷とこことでどっちが安全なのだと尋ねられたが、正直言ってどっちもどっちだと思う。
顕界の妖怪はどこまでも強気で、まだ自分は幻想郷に行く気はないとばかりに襲いかかってくるし
幻想郷はルールの中で襲ってくるが、ギリギリの段階にならないと襲ってこない顕界と違って
気軽に襲ってくる傾向がある。 
表現が変かも知れないが概ねそんな感じだから困る。


霊能局の新人さんは警視庁から引き抜かれたそうだが、本当に運が悪い奴だと思う。
だけど大丈夫、どんな目に遭っても殉職はないからとだけ言うと、目を丸くして硬直していた。
まあ、死亡届がなければ死んだことにならないのがこの国って奴なのだ。