□月 ●日  No1453 充電キット必須


月の都 科学技術が発展し尽くしたというそこを練り歩くと一つの重大な事実に突き当たる。
ちっとも便利じゃない。


移動一つとってもそうだ。公共交通機関としての転送機はあるが
基本移動は大半徒歩と来ている。 早く移動したい場合は走るしかない。
バイクとか自転車とかそういうものはないのかと思ってしまう。


住民に話を聞いたら、そこまでなんで急ぐのかと言われてしまった。
寿命が長い彼らにしてみれば、わざわざ急ぐことがナンセンスというわけだ。
こんな超絶科学技術は真っ平ご免だ。


困ることは他にもある。 通信で伝令すれば良い場面でわざわざそこに
赴かないといけないとかだ。 聞いたら技術革新で通信周りは
いくらでも詐称できるからだと言うのだが、そんなことはセキュリティまわりで
対策すればいいことだろう。
それどころか月の都の防犯システムは最悪だ。 
顕界では考えられない。 


背番号制が強化されており、犯罪行為をしても国土の狭さも相まってすぐに
発覚してしまうからだそうだが、私だったらここでまともに生活するのは
とてもじゃないが耐えられない。
結論で言えば、月の都は死ぬほど退屈で、基本的に喰っちゃ寝で暮らしている。
まだ顕界にいるニート達の方がアクティブに暮らしていると断言できる。


それもこれも綿月家に一晩だけ泊まったからなのだが。
前日の魚産地詐称のためとは言え今後はもうちょっと暇つぶしアイテムを
揃えてから入らないととても持たない。
せめて携帯ゲーム機とか持って行かないと無理だろうと思う。


しかし穢れまみれの私が何故綿月姉妹の家に泊まれるようになったのか。
薬屋のお陰かと思ったが、最近豊姫と朝倉が同志とか言い出しているので
なにか関係があるに違いない。 
どうやら連中を根本的に勘違いしているのではないか
そう思ってやまないのである。