□月 ●日  No1504 幻想目の科学


朝倉のメガネが放置されていたので皆で適当に掛けてみたら度が入っていなかった。
代わりに出てきたのはログイン画面とエラー表示。 どうやら生体認証されているらしい。
誰が掛けてもエラー表示のままだった。


幻想郷の妖怪で真っ先に気づくのはメガネを着用している者が殆どいない事実だろう。
朝倉はどうもメガネと言うよりもヘッドマウントディスプレイのようだ。
考えてみれば空飛ぶ人妖にとってメガネは邪魔以外の何者でもない。
万が一落下でもしたらそれだけで致命傷だ。
メガネを掛けることは弱点をさらけ出して行動しているのと同義なのである。
仮に近眼ならコンタクトレンズを付けないとやってれないだろう。


弾幕戦に興じる妖怪達にとって目は命に関わる重要なものである。 単に見えるだけではなく
遠近感も重要となる。妖怪の中には目だけではなく色々な器官を用いて少しでも応答速度を稼いでいる者すらいる。
たとえば、兎軍団は耳を使った波長分析を弾幕回避に利用している。
もっとも所詮波長なので期待するほど応答性が高いわけではなく結局回避の邪魔になるという間抜けな結果にしか
なっていない。
刻一刻と戦況が変わる弾幕戦では応答性がコンマ秒遅いだけで致命傷だからである。


妖怪が人間型をしているのも弾幕戦で一番有利だったのがたまたま人の姿をしているものだったに過ぎない。
視野の広さよりも立体視ができるように目が前に移動していた方が弾幕戦では有利に働くからだ。
弾幕の隙間までの距離を知るには立体視が重要となるからである。


そんなわけで幻想郷で結膜炎とかになった場合は弾幕戦禁止が基本ルールである。
風邪引いている状態で弾幕戦をしないのと同様の発想だ。


また、人間で弾幕戦を行っている者が少女ばかりなのは目の問題に起因することを忘れてはいけない。
人間の網膜は年齢とともに衰えるからだ。
色の好みが所謂 濃い赤などからシックな色に変わるのは別に性格が変わったわけではなく老化したからだ。
一定年齢でぎらぎらした弾幕を目に浴びればあっという間にハレーションが起こる。
被弾率が増えるから弾幕戦なんてやっていられないのである。 そうなったら引退するしかない。
その前に命を落とすケースも多々あるが。


さて、朝倉のメガネだがみんながかけたせいですっかり変形してしまっていた。
怒られると思っていたら、朝倉はすでに別のメガネを掛けており、皆が掛けたメガネに修理中のメモを
貼っていた。 とりあえずみんなセーフである。