□月 ●日  No1573 お互いの限界


紅魔館にてメイド長より欠けた歯車の類を何個か預かってくる。
これらの歯車は金属製で、幻想郷では自給不可能な代物だ。
これは幻想郷における冶金技術の遅れに起因する。
それはまさにかつての我が国の写し身であるかのようだ。


これら金属製の歯車は精密部品でありながら幻想郷で作ると精度が足りないため
正しく時を刻むことが出来ないのである。
これはメイド長にとっては致命的な問題である。
多くの部品は魔法を用いて精度を稼ぐことができるのだが、古来より魔法と金属は
あまり相性がよいものではない。


魔法の遮蔽物で金属製の鎧が用いられるのもそのためだ。
これは金属が様々なものの合金で作られていることに起因する。
銀製の武器が魔法と相性が良いのも実は精製技術が早々に発達したからという
理由の方が多いくらいだ。


というわけで歯車の類を発注するのだが、この手のものは飛行機でヨーロッパに
運び、再生して貰っている。 顕界なら多少の時間は電波時計やクォーツを
用いて時間補正しているのだが幻想郷ではそうはいかない。
歯車の正確さが全てなので、結局専門の職人さんに作ってもらう必要がある。
これが金が掛かって仕方ない。
できるのにも数週間かかる上に届くまでも飛行機でまた数日掛かる。
そして宅急便で運ぶと怖いので空港で受け取るというプロセスとなる。


厳重に箱詰めし、プチプチを開封すると中から数センチの歯車が出現。
油も致命傷なのでピンセットでつまんで移動。
それを厳重に布にくるんで紐で縛る。注意しないと歯車がぽろっと落ちる。
かくして幻想郷に小型歯車が届くわけである。


外の世界なのに歯車の一つや二つ直ぐ届かないのかと文句を言われながら
なのはなんともご愛敬である。