□月 ●日  No1794 でかいことはいいことらしい


幻想の世界には様々な妖怪がいるのだがどうしても幻想郷にもいられず顕界もいられず
消えた妖怪たちもいるらしい。本当のところはどうだかわからないが。


そんな妖怪たちの中から今回は特に超巨大な妖怪を紹介させていただく。
一応うちの会社の教本にも載っている。
実はこの妖怪、実態サイズはたいしたことがない。
おそらく数メートルくらいの妖怪でこの程度のサイズは中型サイズだ。
だが、この妖怪はやっていることのスケールがきわめて大きいのだ。


まず、この妖怪は人間の負の感情をエネルギー源とする。
ただし、人間を完全に殺すことはしない。
あくまで必要な分だけ怖がらせる。 これが重要。
そして必要とあらばガス抜きをする。


この妖怪は自らを魔王と名乗り、雑魚モンスターを大量に生み出す。
雑魚モンスターは最初は人間たちを襲って彼らに恐怖を植え付けるのだが
その中で、人間型のモンスターも生み出している。
こいつの名前は業界名で勇者と呼んでいる。


勇者は人間の恐怖が飽和状態となり、軍隊を繰り出したりする前に
出現する。一応、お供の人間の目くらましのために伝説の武器とか伝説の鎧やら用意する。
本当は装飾が多いだけのなまくらだが、こいつに当たったらモンスターは死ぬように
セッティングしてあるので安心だ。


勇者の仕事はガス抜きである。そして魔王と呼ばれる存在の最大のイベントを呼び出すための仕掛けだ。
勇者は魔王を打ち倒す。この段階で魔王の精神はこの勇者に移転する。
いわゆる分家みたいなものだ。 しかし、ここで重要な事実に行き着く。
人間たちは自分たちの力で魔王を倒していないのだ。


そう、その結果平和になった世界で数年以内に主導権争いが勃発。
しばらく戦乱の世になる。 これがなんと魔王にとっては収穫期なのである。
戦乱が収まれば魔王は復活する。 戦乱の世で復活したら強力な兵器で
最初に立ち上げた魔王軍がやられるからだ。


この妖怪。いちおう最初の大戦くらいまでは生存が確認されていたのだが
人間がノーリスクで対象を殲滅できるようになってから行方知れずらしい。
彼らの活動は電子の世界で息づいているので結果的に彼らの生き残り戦略は
正しいのかもしれない。

すくなくても奴の分家はそこかしこにいるのだから。
まあある意味大成功を収めた妖怪である。