□月 ●日  No1978 むしろ妖怪乗算婆


幻想郷の生活で、とても困るのはなんと言っても寒さ対策である。
一歩間違えれば低体温症で亡くなってしまう。
特に幻想入りして間もない人間の場合、低栄養と寒さのセットで一気に体力を持って行かれて
しまうケースが後を絶たない。 実際問題として幻想郷にやってきた外界の人間の死因は
概ね栄養失調による低体温症である。


逆にこの寒さに慣れると、顕界に戻ったときがめんどくさい。 
暑さでYシャツ一枚でいたら防寒着を着ている周りの人から変な目で見られたものだ。
お陰でほとんど風邪は引かなくなったように思う。


さて、この時期幻想郷にあって便利なのは廃棄されている新聞紙だ。
防寒用にかなり優秀なので何枚か手に入れて穴を開けて利用する。
天狗が涙目になって睨んでいるけど盛大に無視。


そんな折り、メリーとレンコのコンビから変な発言が飛び出した。
なんでも妖怪と間違えられるという。
お前ら妖怪じゃなかったのかと尋ねたら二人にかなり本気でどつかれた。
といいますか、何かしらの能力を持っている時点で人外に片足突っ込んでいるのは間違いないだろう。


彼女たちが妖怪と間違えられるのは防寒着を着込んでいるからだ。
当然だろう。高速飛行する者にとって寒さ対策は必須である。
だから着込んでいる者が妖怪と言われても別に驚かないわけだ。


納得いかないという二人。
当然と言えば当然だが、簡単に説得する術はある。
「朝倉を見て貰おう。 ストッキングの下に股引があるのを私は見逃していないのだ。」
と言うと、たしかにそうだと言われた。


あとで気がついたが、朝倉もメリーとレンコと同じように遺伝学上は人間である。
もっとも誰一人として彼女が人間と認めていない事実がはっきりしたわけだがそれはそれである。