□月 ●日  No2321 誤解される妖怪


ムラサ船長と言えば命蓮寺に生息している礼儀正しい妖怪である。昔は人間を殺しまくっていたせいで
ついた渾名がセイレーン。歌を歌って船をおびき寄せるというが、ただ単に世話話好きなだけである。
人殺しをしまくる理由も結局自分が退屈だからという一点であり、要は他人と会話できるだけで
おおむね幸せというよくよく見てみるとお気楽な妖怪だ。


ハッキリ言うが水難事故というのはその多くが不幸もあるが、やはり事故が発生しやすい何かがあるらしい。
人を襲っているというイメージがとても強い彼女だが私に言わせればそれは明らかに阿礼乙女が彼女の
実情をきちんと理解していないすなわち誤解であるというのがこちらの見方だ。


よくよく話を聞いてみると実のところ彼女が柄杓で何をやっているのかと言えば、実は船底から水を
掻き出したりするし、船底を破壊しているように見えたそれは船の姿勢を正すために必要な部分を
破壊して船が完全に沈むのを防ぐためだったりする。


彼女が聖輦船を見ることで解放されたのも実際のところは沈まない船があれば自分の役目が終わると
思ったというのが大きい。
彼女は自分が人間をやめた時の役目を忠実に守っていたというのがどうも事実ではないかと思う。
つまりは嵐に見舞われたときに船員を救うために身を投げ出す人柱というものだ。
そうなると彼女が仏道に入るのはいわば当然の成り行きだったことがわかる。
彼女を正しく評価していたのは大師様だった。 大師様についていくのはむしろ当然のことだった。


なぜこのような説が我々の間では有効かだって?
そりゃ単純な話だ。ムラサ船長が幻想郷に旅立った後も水難事故は減る様子がないのである。
彼女の柄杓の本当の効果については実のところ朝倉がムラサ船長のコスプレをしたときに発覚したらしい。
なんともはやだ。