○月 ◆日  No281 巫女様と功徳の話


博麗神社の人入りが極端に少ないのは今に始まったことではない。
巫女様は、妖怪ばかり近寄るようになったからと思っているようだが
うちのボスは違う見解を出していた。
「徳が足りない」というのだ。


そもそも博麗の巫女に徳があり、皆からも慕われる人間になれば
参拝客は黙っていてもやってくる。
結界の外でも「人徳」という言葉で残っている「徳」であるが
本当の徳というものは悪人でさえでも平伏させる力がある。
浄土真宗でおなじみの親鸞上人のところに物盗りがやってきたときが
まさにそれだったと言われる。
博麗の巫女に同様の徳があれば人々は多少のリスクを負ってでも
神社に赴くことになるだろう。
そして沢山の人間がやってくれば逆説的に妖怪たちは人間たちを
襲うことができなくなるというのだ。
今の幻想郷には、妖怪から人間を守る妖怪まで出現しているのである。


この問題に対しては隙間妖怪にも責任の一端があるという。
彼女が大結界の維持を最優先事項と考えるあまりに、
結果的に巫女の増長を招いてしまったと言うのだ。
今の巫女は道行く妖怪を無計画に攻撃する破壊者と化している。
そんな荒事ばかりの彼女を見て、果たして一般市民は慕ってくれるのか
実際のところ上白沢のほうがずっと人望があるというのが現実なのである。
もちろん、今回の件についてはいくつかのからめ手を用いる予定だそうだ。
博麗の巫女に功徳を積ませることができるのか? これからの検討事項となっている。