○月 △日  No374 お盆ですよ


お盆に向けての動員計画が発表になる。
お盆の帰省ラッシュで幽霊たちを顕界に送るための臨時列車を
編成するためだ。 


キセル乗車が後を絶たないために、今年は死神による運賃請求から
自動改札機を用いることになった。
数千台にもおよぶ自動改札機のテストも魔界のスタッフが昼夜
ぶっ通しで作業している。


閻魔様の執務室で会ったことのある魔界の職員さんが
ドリンク剤を飲みながら働いていた。
紅魔館にいる司書のデーモン族たちも今日は特別にかり出されていた。


列車は99両編成で冥界にある臨時駅に停車している。
これから数日間、幽霊たちを送り続けるわけだ。
列車のメンテナンススタッフである天狗や河童たちが書類を見ながら
最終テスト繰り返している。


最近の幽霊たちは白装束に三角頭巾などというものは身につけない。
それらの服装はとっくに時代遅れになっている。
幽霊たちはそのものたちの一番充実したときの年齢の姿になっている
ことが多く、同時期同年代に亡くなった人でも
外見年齢が驚くほど違うのである。
初老の男性とセーラー服の女の子が夫婦だったとかもざらである。
事情を知らない人がみたら児童買春で逮捕だろう。


さて、帰省ラッシュはまだ雰囲気がいいので問題はない。
問題はUターンラッシュのときだ。 
残された人間のその後の運命如何で、幽霊たちの精神状態もけっこう
分かれるのである。 この辺は俗っぽくて面白いのだが
巻き込まれる側はたまったものじゃない。


幻想郷のお盆はある意味戦争である。