○月 △日  No375 罰当たり


幻想郷でも暑いものは暑い。
ヒートアイランド現象とか温暖化現象とかの影響で
幻想郷と結界の外の気温差は5度近いはずだが、35度と30度では
あまり有り難みは湧かない。 むしろエアコンの存在があるので幻想郷の
ほうが暑いという印象すらある。


そんな夏の毎日であるが、今日は三途の川にそうめんを届けることになった。
死神たちが食すそうめんらしいが何やら嫌な予感がする。
しかし三途の川辺はさぞかし涼しいだろうと思って二つ返事で仕事を
引き受けた。


結論から言えばそれは認識が甘かった。
三途の川でも暑いものは暑い。 むしろ三途の川から蒸散する水蒸気の
せいで気温こそ幻想郷より低くても蒸しているのだ。
賽の河原では石積みをする石が焼けてしまい、積むことができない
というので鬼たちが石ころに打ち水をしている。
結果的に石を崩すわけだが、あくまでも罰は石積みであって焼けた石を
触ることではないという思想があるらしい。


注文主は閻魔様のお知り合いのグラマーな死神さんである。
いったい何に使うか聞いたら
流しそうめん」と答えた。


嫌な予感的中


第一そんな罰当たりなことが許されるのかとなぜか背広を着ている
眼鏡をかけた紳士風の死神に同意を求めたら、なんと彼が別の部署の閻魔様
だと言うので大変驚いた。 外見に驚くより閻魔公認という事実に驚いた。
まるでハリウッド映画の間違った日本人を地でいったような外見の閻魔様は
「時が変われば価値観もまた変わる」と仰っていた。
三途の川の水温は外のゆだるような空気とは裏腹にとても冷たいらしい。


その後一緒にそうめんでも食べないかと言われたが
その後の配達も押していると言って遠慮することにした。
正直そうめんと一緒に三途の川の水を飲むのは御免被りたいところだ。