△月 □日  No472 河童と業(かるま)


河童と何度か仕事をすることがあるのだが、彼女たちの生態が今ひとつ
分からないときがある。
河童の一人がうちの社員に恋をした。本人もまんざらでもない様子だった。
しかし、その河童の行動といったら情熱的を遙かに通り越して
社員の業務に支障が出てしまった。 業務中にも関わらず抱きつくキスするとか
もうどうしようもない有様である。
最後はストーカー同然になってしまい、結局別れる羽目になったという。


河童は生きることや生殖することに極端に執着する特性があるようだ。
この執着が科学に向けられた時、河童は驚異的な技術者へと変貌するのである。
その性格はまさにオタクのそれで、自分の好きな分野については延々と
話してしまう。 岡崎や里香女史とは波長が合うらしく延々と話しても
飽きないと言っている。


さて、幻想郷の河童は確かに人間に対しては好意的なのだが
彼女たちが人間に牙をむく瞬間があることを最近知った。
その日あったのは土手で若い女性の土左衛門が発見された。
そのあまりの苦悶の表情は正視に耐えられる物ではなく、おまけに体の一部が
溶けている有様である。 里香女史が棺に体を納める仕事をしていた。
あまりの悪臭と腐敗に嗚咽が止まらない。
一方村人は口々に河童に引きずり込まれたと話す。


里香女史に河童が人を殺めることがあるのかと尋ねたら
まずあり得ないが一つだけ例外があるという。
それは生まれたばかりの赤子を親が殺すときらしい。
以前も取り上げたことがあったが幻想郷ではしばしば口減らしが行われている。
その姿を河童が目撃した場合子供を守るために親を殺すのだという。


子供はどうなるのか? 河童が責任をもって育てるらしい。
実は河童の存在は水子と切って切れない関係にあるらしい。 生まれたばかりの
赤子を殺した罪悪感を覆い隠すために河童が存在するとも言われるのだ。
河童とは人間の身勝手が生み出した存在とも言えるわけだ。


女性を殺した河童はどうなるのか? 幻想郷ではお咎めがないらしい。
河童が人を殺すのはよほどのことがないと無いそうだが、
なんともやるせない気分になってきた。