△月 □日  No471 幻想郷の朝を攻略せよ


幻想郷の朝は早い、そして寒い。
夏住むことを旨とすべしを今に伝える建物はすきま風があるし、
布団は毛布の類はなく綿の布団が一枚あるのみである。
複数枚の布団を敷くのは遊郭くらいなものだ。


そんなものだから幻想郷の朝はとにかく早くなる。 寒くて起きてしまうからだ。
いわゆる顕界と呼ばれる幻想郷の外の世界での感覚で過ごすと寝不足に陥る。
慣れるまではそれなりの時間を要するだろう。
私も社員寮まで戻ればエアコンが効いて暖かく過ごすことができるのだが
残業続きで宿を借りて休むことになってしまうと体が冷えてたまらない。


香霖堂に行くと、羽毛布団の類を発見することができる。
顕界のマルチ商法とかで売られている羽毛布団である。 
まさかこんなところに行っているとは売っている人も想像できないだろう。
香霖はこの布団にぼったくり価格をつけている。 
寒い夜も快適に過ごせる羽毛布団はあこがれの商品なのだ。
もっとも香霖とて、結界の外でもぼったくり価格がついているとは思うまい。
布団の前で苦笑していたら、香霖が顔をしかめていた。


最近あまりに寒いのでより快眠を得るため小豆枕つくりに挑戦することにした。
この小豆枕を利用するとわりと長時間ぬくもりが残ると上白沢から聞いたからだ。
試してみると熟睡するまでの約30分の間確かに暖かい。
幻想郷ならではの生活の知恵という物だろう。 早速広めることに決定。


自称現人神のところにもこの小豆枕を教えようとしたら
あっさりいらないと言われた。 幻想郷の冬は寒くないのかと尋ねたら
温風を循環させる術があるらしい。 
暖房器具を早く手配したのにあまり意味がなかったということだ。 
もっともエアコンの効いてない部屋は自称現人神にとってはあまり珍しいことでは
ないとのことだ。 自分よりずっと年下の女の子のほうが頑丈だということか。


自称現人神に朝にエアコンを点けるのは邪道とまで言われ
所詮、軟弱物である自分がちょっと悲しくなってしまった。