△月 □日  No470 戦争の裏でそろばんを弾く


朝出社したら社内が妙に慌ただしい。
月監視衛星で映像の乱れが起こったと言うことで岡崎と朝倉が大騒ぎしている。
北白河に話を聞いたら機械が故障したわけではないという。


飛び交う叫び声や人の動きから推察するに、月の結界に物理的に進入を果たした物体が
出現したため、結界の構成が一部変わってしまったらしい。 
私が見る限り映像は元に戻っており問題はないと思うのだが、
岡崎は今回の事件で月に物資やら食べ物やらを送れる目処が立ったと
喜んでいるようだ。 
列車の改修工事も急ピッチで進んでいる。 納まるのは目下酒類になりそうだ。


もうすでに酒造メーカーには月の人々が飲みやすいお酒が開発されているらしい。
永遠亭の薬屋開設資金と引き替えに食べ物のモニターをしてもらっているという。
滅茶苦茶気が早い話である。  


最近紅魔館からの注文内容がきな臭い事になっている。
保存食の類や、冷凍庫の類などの問い合わせが相次いでいる。
拒否することもできないので、あちこちのメーカーに問い合せたり
香霖堂の在庫元帳を精査して代用になるものがないか調べている状況だ。


朝倉から体のサイズを測ると言われ、強引にあちこち触られる。
口元から笑みが漏れる度背筋に悪寒が走る。 完璧にセクハラだ。
目がすでに飢えた獣のようになっており、絶対本来の目的がずれ始めている。
魂魄に助けを求めたら、宇宙服のサイズ検査だから我慢しろと言われた。
月の結界内部にいる分なら問題ないが、事故で結界外にはじき飛ばされると
命が危ないらしい。
貞操の危機は守られたが、他にも社員数人が犠牲になっていた。


まさか本気で月にまで物を配達させる気なのだろうか。
商売人は早くも戦争の裏で商売することを考えているのである。
いろいろな意味で恐ろしい話である。