△月 □日  No473 幻想郷の郵便制度について


我々の業務の中に、郵便事業まがいの仕事がある。
霧雨店などで手紙を出すとこちらの会社に集荷して、次の納品先に手紙を
届けるという仕組みである。
幻想郷にも郵便業務はあるのだが、我々のいるところとは大きく違う部分がある。


それは切手という概念が無いことであろう。
郵便物が来たときお金を払うのは受け取る側である。
本人が受け取り拒否した場合は、ただ働きとなる。
酷いケースだと、郵便物に印を付けてそれがどういう意味なのかを
示し合わせておいて郵便物を受け取らないなんてことも横行している。


そこで幻想郷にも切手を導入しようと話をしたら、ボスから住民の反発を
招くと言われて却下された。 
中央集権的政府が無い幻想郷の悲しさだと思っていたら
霧雨のご息女が自分の足回りを生かして手紙を届ける仕事をやって
すぐに飽きるわ、興味のある手紙を開封するわで散々だったそうだ。
妖怪の一人がなぜ手紙を開封するのか訪ねたら、開封した手紙の宛先が
皆同じだったと聞いている。 微笑ましいが迷惑な話だ。
おかげで幻想郷の郵便制度整備は当面おあずけになりそうな案配である。


妖怪たちは足回りを生かして手紙によるやりとりをあまりしない
聞くことがあるのなら直接聞きに行っている者が多い。
ところが色恋沙汰となると話は別で、恋文などはやっぱり郵便システムを使用する。
我々のいるところなら、メールや携帯電話といったいつでも連絡を取り合うための
手段があるのだが、幻想郷ではそうはいかない。
おかげで恋文の文面は特に物凄い。 とりとめもないことも書いているから
文章量も多い。 おかげで恋文の重さが彼氏の心バロメータとさえ言われている。


今日、鴉天狗の一人が何故私たちに仕事を依頼しないのだと文句を言ってきた。
やんわり断ったが、いつまでもしつこくへばりついてきて本当に疲れた。
ボスに報告したら大天狗に話を通してくれたので、どうにか手紙が天狗の手に渡ることは
なさそうである。 
ぶっちゃけ色恋沙汰の一切合切をすべて天狗どもに引き受けられたら
えらいことになるのは目に見えている。 
この業務だけはなんとしても死守したいところである。