□月 ○日  No516 外ではすでに仕事納め


幻想郷の年末はまだ先だが、うちの会社では仕入れ先の仕事納めによる物流の混乱で
注文した物がいつまで経っても到着しないトラブルが起こっている。
今日も昼過ぎに入荷予定の家具類が夜9時近くになって届くトラブルが起きた。


うちの会社はあくまで商社である。幻想郷から商品の注文があったら
取引先に発注書を送り、商品が入荷したら順次輸送列車に運び入れて
ピストン輸送する仕組みである。
今年に至っては幻想郷自体の拡大でさらに多くの物資を運ばないといけない状況だ。
列車は馬力が上がったので積載量の問題はないのだが、取引先のキャパシティは
いかんともしがたいものがある。


取引先が休みの約10日間、幻想郷を維持するための物資を貯蔵したり予め
運んでおく必要があるためてんやわんやの大騒ぎである。
商品の検品をするため非番の河童たちも総動員して仕事にあたる。
彼女たちはLサイズのキュウリ8本入り2袋で休日出勤を快諾してくれるので
とても有り難い。
事務仕事については魔界に住んでいるデーモン達が役に立つ。
官僚化が進んでいるデーモン達は総じて知的水準が高く、我々の仕事にも
すぐに順応するからだ。


この時期になると中有の道からの注文も増え出す。
寒くなってくると死者数も増えるので、当然の如く稼ぎ時となる。
取り扱うのは水飴などの類だが、こっちも年末年始で在庫を確保するのが
難しくなっている。 引き当て処理は一刻を争うような状態だ。


急いでいるのに列車の信号は赤になっていた。
聞けば幻想郷には雪が降り出して除雪作業が始まっているらしい。
雪をかき分けたら氷妖精が雪を固めてまるで雪のトンネルみたいなものが
できあがる。 列車のサーチライトが雪に反射してとても眩しいが
イライラしていることを忘れさせるなんとも美しい光景である。
幻想の世界の冬はこれからだ。