□月 ○日  No518 青田買い


机の上に正月飾りが飾られいよいよ年越しまであと少しである。
机の上には印刷屋から届けられた求人広告が置いてあった。
ボスに頼まれて求人広告の校正をするためだ。


うちの会社はいつも人材を募集している。 あまりにいつも求人広告に名を連ねているから
ブラック企業じゃないかと評判である。
特に妖怪相手の商売の場合、最初はかわいい少女妖怪に喜んでいても一週間もすれば
彼女達の裏の顔を嫌が応にも見せられてすぐに会社を辞めてしまう。
人事部の機密保持の魔法も今や流れ作業的になっている。


うちの新入社員の名簿を見たら高卒の社員の数が結構いるのに気づく。
考えてみれば、北白河も年齢的にその程度であるからおかしなことはあまりないのだが
その比率が不自然に多いというのが正直な感想である。
この不思議すぎる人事の理由を朝倉に聞いてみた。


賃金が安くできるからとも思っていたが、大きな理由はハングリー精神があることらしい。
高校卒業で就職する人はたいていの場合経済的な理由で就職を余儀なくされる場合が多い。
そのため離職率が低い特徴がある。
また、妙なプライドがないのも特徴だ。こうしたところから叩き上げた人材はとても
有用であるらしい。 確かに北白河の立場はある意味朝倉よりも強い。


しかしせっかく入社しても幻想の世界で仕事をしていればたいていの人はショックを受ける。
最近は幻想の文化以前の問題で汚れ仕事ができなくてついて行けない人も増えた。
トイレ掃除もできない人は幻想郷に行くべきではない。
西洋系妖怪は特に臭いがきついことも覚えておく必要がある。
トイレがなかった頃に生きていた妖怪は未だにそこら辺に小便をして大迷惑である。
しかもスカートをまくらないでする者もいるから空を飛びながら臭いをまき散らす
者も珍しくない。 紅魔館もトイレが増築される前はそれは酷い臭いだった。
今でこそマメなメイド長のお陰で薔薇の香りが漂う綺麗な場所へと変貌を遂げたが
関係者は口々に嘘みたいだと言うばかりである。


その手のものが好きな俗に言う変態さんも入社させてみたが
ふたを開けたら妖怪たちの怒りを買って左上が無くなって戻ってきた。
労災認定ですったもんだやった挙げ句会社をやめたらしい。


いっそそういう生き物に耐性がありそうな人を混怪で探そうと進言したら
もう試して、一週間で会社をやめたと言われた。
うちの会社は常に人員不足である。