冬らしからぬ暖かな一日。 本日も会社は安定して運営されている。
幻想郷に送る物資総量は去年と大きく変わっていない。
あまりに変わらなすぎる。それは私を不安にさせる。


燃料価格高騰で船の採算性がやや悪化している以外は特に問題はない。
八雲の式からも特に問題は報告されなかったが、今一歯切れが悪い。
組式で思考する狐には嘘は少々荷が重いのではないだろうか。
素直に協力を申し出れば断らないのに相変わらず回りくどいことをしてくる。


幻想郷では新年の飾り付けを急がせている。
本来なら妖怪太陰暦に従い旧正月を元旦と位置づけているが
月への依存状態を和らげるために緊急で祭りを始めることにした。
天狗達は元旦が二度来ると言って喜んでいた。
それでは意味がないのに。


久しぶりに博麗神社の様子を見てみる。修行を続けている霊夢の姿を見て
少し涙腺が緩んでしまった。 霊夢に呼び出されていた住吉の三柱神と目が
合ってしまった。私の説得に応じてくれたことに深く感謝する。
だが私は今回の件については反対の立場を取っている。
八雲紫の目指すことは幻想郷のバランスを乱す物だ。 彼女は大きな変化には
リスクが付きものであると主張しているが、私はただ気心知れた仲間達と
おもしろおかしく過ごすことができれば十分ではないだろうかと思う。


もう一つ心配なことは魔理沙のことだ。
この幻想郷で一番安全な場所に隠したつもりだったが、自らトラブルに
首を突っ込むようになってしまった。
洩矢にその話をしたらもっと本人を信じればよいとアドバイスを頂いた。


オモイカネは外見上は普段通りに行動しているように見える。
明晰な頭脳も錯綜する情報の前にどう出るかは見物だと思っている。
あの一件で我々の意図していることは察してくれるはずだと信じている。


机の上に私の絵が描かれたディスクが置いてあった。
もっと大きく扱ってもらえるはずなのに話が違う。
断固抗議したい。


□月 ○日  No519  ある人物の手記