□月 ○日  No538 列車事故と妖精列車


幻想郷で物資を運ぶ輸送列車。 便利になったとはいえ顕界から幻想郷に突入するときは
いつだって緊張するものだ。 幻想郷突入時に事故を起こすと最悪何処とも分からない土地へ
飛ばされる場合もある。


幻想郷の入り口はいつも同じではない、常に違う場所と言っても良い。
岡崎は幻想郷に突入することは、静脈に注射をするようなものだと言っている。
同じ場所で何度も行き来すると結界は堅く脆くなるのである。
神隠しがいつも違う場所で発生するのもそういうことに起因する。


中間管理職狐から受け入れ準備が整ったことを告げられると、指定された座標で
転送が行われる。 ところが中間管理職狐の様子がおかしい。
ろれつが回っていないのだ。 しかも受け入れ座標も聞いたことがあるようなないような
数字を指定された。 指示には従わないといけないのでその通りにしたら
ばりばりという轟音とともに列車が引っかかりそのまま停止してしまった。


外を見渡すと結界に大きな亀裂が生じている。思わず入力ログを確認すると確かに指定された
とおりの場所から転送し始めていた。 どうやら相手側のオペレーションミスらしい。
幸い先頭車両は幻想郷の中だったので、予備電源を使ってとりあえず通信を試みる。
あっさり連絡が通じて助けが来ることが伝えられた。


真っ先にたどり着いたのは顕界側の朝倉である。 物凄く不機嫌そうな顔をしていた。
ついで、中間管理職狐もドクター列車を引き連れて現われる。
たちまち始まる口論。 だがお互い弾幕ごっこにはならない。
落ち着くのを見計らって、白黒付けないのかと尋ねたら、
ハモり声で「巻き込まれて死にたいか」と言われた。 私が悪かった。


ドクター列車でとりあえず牽引したが、途中でさらにひっかかってしまっているのか
ばりばりと五月蠅い。 仕方なしに、途中で列車を切り離してそのまま妖怪の山に
向かうことになった。 あんまり音がなったものだからあたりは妖精達の野次馬でごったかえした。
氷妖精が「見に来てやったからお菓子くれ」と言うので、山に着いたらと言ったら
のろのろ走る列車の後ろを妖精達が追いかける事態となった。
まるで貨車が増えたような感じで妙な光景である。


とりあえず駅に到着して、妖精達に小さなお菓子袋をあげたら満足して帰ってしまった。
その後帰れなくなった妖精が山で泣きわめくので白狼天狗たちが必死で家に帰したそうだが
それはそれである。ちなみに中間管理職狐は二日酔いのまま仕事をしたことが隙間妖怪にばれて
おしおきされたらしい。 正確無比の中間管理職狐も酒には弱いようだ。