□月 ○日  No537 幻想の世界の路上生活者


浅間を連れていつものように仕事をしていると路上生活者たちを発見する。
幻想郷にも路上生活者がいる事実に浅間は感心しているようだったが
別に珍しいわけでもない。


幻想郷であってもありとあらゆる人がそれなりに幸せに生活しているわけではない。
所謂路上生活者と呼ばれる人たちもまた存在している。
しかしながらその絶対数はとても少ない。
その理由として幻想郷には社会保障制度がないため、路上生活者にとって厳しい環境であること
もう一つは山に逃げ込んだ路上生活者がそのまま妖怪化してしまうケースがあることが挙げられる。


うちの会社でも朝倉から、路上生活者をむやみに救済してはいけないと厳命されている。
幻想郷の問題は現地の人間が解決するという原則があるためだ。
上白沢たち妖怪の一派は職業訓練をさせることで路上生活者からの脱却を促す
活動をしているようだがそれでも路上生活者を完全に無くすことはできない。


もちろん路上生活に至る原因は人それぞれである。
単純な貧困による者から家庭崩壊で逃げ出した者など様々だ。
また幻想郷では親の立場が極端に強いため家でした子供がそのまま社会の枠組みに入れずに
路上生活者になるケースがある。 霧雨のご息女がこれに近いが、彼女には経済的
バックがあるので住むところまで困っていない。


浅間はこのような風景に対しても冷静沈着である。
彼女の活動範囲である酒場でもそういう人を見かけるのだろう。
そういう人たちに関わるべきではないことも浅間は経験で分かっているようだ。


路上で寝転がっている人を見つけたが、死んでいるわけではないようだ。
この時期で昼間に路上で寝ている者がいるとすれば、昼の暖かいうちに寝ておくためである。
夜になるとそのまま凍死してしまうので、パトロールしているメトセラ娘たちに通報する。


メトセラ娘たちは彼らを回収して集会場や寺子屋に連れて行く。
そのたびメトセラ娘は天狗が隠し撮りしたのであろうニート姫の隠し撮り写真を
見せつけてこう説得するのである。
「盆栽警備員になりたくなかったら、職業訓練をうけなさない」
このあまりの迫力のため、多くの路上生活者はうんと言わざるを得ない。
その光景に私も浅間も顔を引きつらせながら笑うしかなかった。