□月 ★日  No568 祈年祭

祈年祭である。 毎年この時期になると行われる五穀豊穣を祈る祭祀である。
暗くなっている豊穣のカミを強制的に起こし行われる祭りである。
幻想郷では祈年祭の実行にかなりの混乱が見られる。
というのも、この行事は江戸の御世でいったん途絶えてしまったものを明治時代になって再開したからである。
豊穣のカミが予め祭りをしないと意味がないと云うのはこの祈年祭がおろそかになっているからだと言われている。


なにしろ肝心の博麗の巫女が出席していないのだからたまらない。
この時期に祭祀を執り行うと説明しても納得してもらえない。
巫女の言い分もわかる。 勝手に新たな祭祀を行ってしまったら幻想郷に多大な影響を及ぼしかねないからだ。
しかし今年になって状況が大きく変わった。
自称現人神が祈年祭をやってくれることになったのだ。 彼女にとっては信仰を集めるいいチャンスなのだろう。


毎年うちの会社の身内だけで行われていた祈年祭だったが、巫女様がいるだけで威力も倍増というものである。
暗くなっている秋姉妹も元気を取り戻してきた。 数日後に控える紅魔館のイベントも安心して出席できそうだ。


この儀式、かなり長い。
スタートは午前10時からだがメインイベントまで4時間かかる。
自称現人神が五穀豊穣を願う原稿を読み上げ、次いで稲穂と農具を模したイミテーションが奉納される。
そして、単純な舞を踊る。 ここまで緊張感の走る中、間違いなく儀式を遂行する自称現人神に驚くやら
驚愕するやら流石は本職の巫女と言うべきかプロである。
天狗たちは祈年祭が再開されたことを新聞に載せる為、あっちこっちを撮影している。
フラッシュを焚くたびに自称現人神のシルエットが神社に映りなんとも言えない趣を感じる。


肝心の秋姉妹はとても満足な表情で帰って行った。 これで幻想郷の五穀豊穣は約束されたものである。
「眠い」とか「寝不足」とかと愚痴もこぼしてもいたが、そもそも二人とも本来はこの時期に起きないと
いけないわけだから文句を言っても困る。


終わればみんなで打ち上げ会。 普段秋姉妹が調整をしているカミ様まで乱入して大騒ぎ。 
自称現人神は体力を使い果たしてダウン。代わりにおねえさんがウワバミのごとく飲みまくる。 
こういうときは浅間をけしかけるに限る。二人ともいくら飲んでも平気だから安心だ。 
浅間は無料で酒が飲めるなんて素晴らしい儀式だと喜んでいた。


北白河がカミ様をお尻をさわったということでパイプ椅子で殴っていたが
酒席は基本的に無礼講である。 こっちは冷や冷やものだが、毎度飲み会はこんなものだ。