□月 ●日  No800 君子危うきに近寄らず


先日、皆を誘っていつもの飲み屋に行ったら警察とテープに阻まれて入れない。
なんでもここでコロシがあったらしい。
周囲の話を総合すると、被害者はこの街でしがない探偵稼業を営んでいたという人物だそうだ。


今日、外は一面の雨。急に気圧が下がっているせいか頭が重い。
この日、その関係の話をアフロのマスターから聞いたのだが
この探偵は30年前の真実を追っていると言っていたそうだ。
その真実とやらがどういう意味を持っているのか今ひとつわからないのだが
なんでも、顕界にエイリアンがやってきて争奪戦が繰り広げられたというのである。


このエイリアンが何者かについては実はだいたいの見当がつく。
レイセンと呼ばれる月兎だ。
争奪戦が繰り広げられたエイリアンの身体的特徴はとても似ているようで、
間違いなく本人ということができそうだ。


私の悪い癖だが、残業してその辺のことを色々調べてみる。
自分で入手できる社内の資料や30年前の配達目録を見てあの当時幻想郷で何が起ったのかを
推測してみることにした。
当時の配達記録を見ても特におかしなものは存在しない。 運んでいるものは日曜用品ばかりである。
しかし妙なことに気づいた。 当時の幻想郷に突入するには中間管理職狐の気まぐれに左右されている。
好きな時間帯に幻想郷に突入できるようになったのは、岡崎教授の可能性魔法世界論が発表されてからだ。
だから出発してから配達が終わるまでは本当に数週間かかるのに、この時期だけ現代と変らない
過密ダイヤになっていたのだ。 もっともローカル線なみのダイヤなのだが。


つまりこの時期顕界と幻想郷の間に相当量のやりとりがおこっていたということになる。
それが何を意味しているのかはまだわからない。
色々思案していたら、たまたまなのか朝倉に出くわしてしまった。
今は夜9時近い。いつもの彼女ならとっくに帰っている筈だ。
何をしているのかと尋ねたら、残業していたと苦笑しながら言っていた。


嘘だと思った。
彼女の衣服は雨で濡れ、床には雨水が滴り落ちていたのだから。


朝倉が珍しく呑みに誘ってきたがとりあえず、適当に理由をつけて資料をとりまとめ家路につく。
なんとなく身の危険を感じたのでとりあえず日記に記してみた。
まあ、知ったところでどうこうと言うことでもないから、危なそうだったら
首を突っ込むのはやめるつもりだ。
追いかけてあの探偵のような末路になるのは御免被りたい。


その探偵だが、アフロのマスターの話ではこの前も学生風の少女に
会っていたという情報を聞いた。 本人は今更援助交際だと思っていたようだが
ブレザー兎の身体的特徴で聞いてみたら、どうもその通りのようであった。
恐らく私の予想は正しいかもしれない。


どちらにせよ警告されるようなことがあったら、とりあえず今回の調査はお開きにしようと思う。
人間いつだって命が惜しいからね。