□月 ●日  No812 幻想郷的教育環境


久しぶりに上白沢の塾に行ってみたら、上白沢が赤子を抱いている場面を発見。
とうとう誰かと結ばれて子供でもできたのかと尋ねたら、教科書の角で思いっきり殴られた。
本当にこぶができた。 
あとで本当の母親がやってきて色々複雑な気分になった。


幻想郷では子供は地域で護るものと相場が決まっている。
そして基本的に地域間の横のつながりがとても強いのである。
たとえば、隣の家が留守とする。鍵はしまってない。
入ろうとすると隣から「留守ですよ」と言われるのである。
これでは空き巣に入るのもままならない。


幻想郷ではモンスターペアレントがまず存在しない。
上白沢に言わせれば、それは子供を育てるノウハウの世代断裂のせいだという。
幻想郷では子供の保育に行き詰まったときは妖怪に聞くことが多いそうだ。
するととても的確な答えが返ってくる。
親がモンスター化するのはなにも親の人格に問題があるからではないらしい。
本当の理由はむしろ「不安」にあるという。


たとえば幻想郷の場合子供をあやすのは親だけの役目ではない。
だいたいは年長者と言われる子供がその役目を負う。
実はここに意味がある。 子供の時から子供を世話することを覚えているから
親になったときに慌てないのだ。


よって塾の責任範囲も顕界にくらべればとても狭い。
上白沢の塾はあくまで勉強を教えるところであると完全に割り切ることができる。
学校をしつけの場として考えている人は入学すら出来ない仕組みである。
私が商品を納品するとき学校の中を覗いてみると皆が静に授業に耳を傾けていることがわかる。
学級崩壊はまずあり得ないことのようだ。


「ここの生徒はみんなおとなしくて偉いですね」
私は思ったことを口にしてみた。
不意に一人の生徒から耳打ちされた。
「逆らったら頭突きされる。 頭突きは痛い」と言われた。
もちろん上白沢のことだ。手加減しているとは思うのだが
ふときちんとした罰を与えることすら幻想入りしたのではないかと考えたらぞっとした。


幻想郷の私塾は今日も平和である。
たぶん。