□月 ●日  No846 嫉妬妖怪の素敵商品


私だって昇進への欲はある。このまま現場で働くのも悪くはないが
この調子で命のやりとりを繰り返していたら本当に身が持たないと常々思っている。
しかし自分の能力は事実上ないに近い。 
私の前任者はスペルカードを使って妖怪と戦うことができたが
残念ながら私にはそれだけの戦闘力はないらしい。


他のメンバーを妬ましく思うと気もある。
事務畑の北白河でさえ自分の身は自分で守ることができるし、
浅間は私よりずっと年下でアル中なのにそこら辺の妖怪をあっさりと蹴散らすことができる。
ボスは私にネゴシエート能力を期待しているが、失敗することも多く
本当にここで役に立っているのか不安になることもある。


そんな感覚のまま地下に下りていたら嫉妬妖怪に呼び止められた。
完全にこっちのメンタリティを読まれている。
どうせだったらはき出した方が得策なので先の話を相談すると
「そんなあなたにいい物がある」と本を差し出された。
これがあれば妖怪と戦うことができるらしい。


「誰でも出来るわら人形指南書 第一巻」と書いてあった。
これで誰かを呪えと言うのか。
わら人形指南書は全16巻、初めての人でもわら人形をつくれるキットと藁が付属
白装束と五寸釘まで用意してあった。
確かに嫉妬妖怪はその手のことは専門の筈だ。
これで何か出来るのなら試してみて損はないかも知れない。


嫉妬妖怪はさらに続ける。
喜びの声ということで目を隠した某人形遣いの談話が書いてあった。
おまけに、正式な呪いの道具ということで閻魔大王賞まで取っているらしい。
もう立派なキャッチセールスである。


今なら完成済みわら人形5点もつけて通常価格いくらのところを特別ご奉仕と言ったところで
身を隠して逃走した。 人間楽しちゃいけないとだけはわかった。


あとで閻魔様に裏をとったら本当に賞を与えていたことが発覚してお茶を吹いた。
効果は絶大だそうだが使ったら確実に地獄で強制労働が待っているという。
丁度阿礼乙女が居ないときの書記の仕事があるそうだ。
別の意味で地獄としか思えないので聞き流した。