□月 ●日  No862 幻想郷に行ったら偏食がなおった 幻想郷在住の S.Kさん


例の神社に配送しているついでにお姉さんと駄弁る。
自称現人神の食べ物でちょっとした異変が起こっているという話になった。
彼女の好みの食べ物が明らかに変ったらしいのだ。


今まで彼女は一般の女子学生の好みをしていた。
彼女が幻想郷に行くことになったとき、食べるものがなくなって自称現人神の生命を脅かす
結果にならないかと議論になったことがあった。
しかしボスは問題はないと言って全く取り合わなかった。


おねえさんの話では、野菜の類もさることながら動物や魚の内臓も食べるようになったという。
今までなら食べることがなかったものをより好んで食べるようになっていったらしい。
本人は今まで心で嫌がっていたのに今では体が欲していると言っていた。
実は隠れグルメを発掘したとか幻想郷の環境だからより美味いと思っていたら全然違うようだ。


実はこれ、人間の体にとってはごく自然の出来事である。
人間はおおよそ食用に適さない食べ物も栄養価が高いと脳が判定すれば、美味いモノとして
勝手に認識してしまうらしい。
辛いモノも刺激的なものが美味いモノと誤認するのはひとえに脳のシステムによるものだ。
たとえばピーマンや唐辛子、タマネギはその代表格だ。
人間が肉食を始めたのも、この仕組みが大きく関係している。
それは妖怪とて同様なのだ。
肉が栄養価が高い食べ物と認識したとき、人間は肉を探すために二足歩行を進化、
余剰栄養は脳を巨大化させる方向へと作用したことは歴史が語る事実である。


話を戻そう。幻想郷はやはり結界の外の世界と比較すれば食環境はあまりよろしくない。
食えるだけでも有り難いのが事実なのだ。
従って幻想郷でグルメという表現はちょっとやりづらい。
よく幻想郷で一番美味しいものは何かと尋ねられるが、はっきり言って評価できないのである。


幻想郷の食環境に確実に適応している自称現人神。
彼女の姿に人間の新たな可能性をなんとなく見いだすことができるのは私だけであろうか。