ずっと疑問に思っていた事なのだが、何故空を飛ぶ必然性のない妖怪までもが
幻想郷で空を飛んでいるのか不思議で仕方なかった。
鴉天狗や夜雀、ヴァンパイアが空を飛ぶのは理解できる。
例えば猫が空を飛んだら肉体のアドバンテージが確保できないし
メイドが空を飛んだところで下から覗かれるのがオチではないのか。
そんな話を阿礼乙女にしたら、過去の記録を持ち出して貰った。
第一次月面戦争の記録である。
そこである違和感に気づいた。一部の妖怪を除いて地上を歩いていたのである。
そして月から帰ってきた妖怪たちは何故か、こぞって空を飛ぶようになったという。
阿礼乙女は少ない重力で慣れきった体で戻ると膝を痛めてしまうからだと言っていた。
確かにその通りかも知れない。
ところが実際のところはもっと別の理由が絡んでいたことがブレザー兎の話でわかった。
月は地震大国だったのだ。
月にプレートテクトニクスが絡まないことはよく知られているが
地球の重力の影響を絶えず受けている関係でどうしても地盤があちらこちらで崩壊するそうで
その都度地震が起こるのだそうだ。
問題はその時間。 なんと数十分も揺れ続けることがあるのだという。
最初は天人たちが戦闘を邪魔するために介入してきたと思ったそうだ。
それくらい長時間揺れていたらしい。
地上人が月に基地を作ろうと試みたところ、地震でホイホイ倒壊して使えなかったという逸話もあるくらいだ。
ウサギたちも地震で倒壊して周囲に被害を及ぼす兵器だと本気で思っていたという。
そんなもんあるかとツッコミを入れたら、依姫にも同じツッコミを入れられたらしい。
そこで月の都では頻発する地震に対応するために誰でも空を飛べる技術を確立したのだそうだ。
これまで秘術扱いだった空を飛ぶ能力はここに来て敷居が一気に低くなり
妖怪たちの殆どが空を飛ぶ弾幕ごっこルールの礎になったというのだからわからないものだ。
朝倉にも同じ話をしたら、魔法の箒なしで空を飛べるようになったのは大きな収穫だと言っていた。
ところで私も空を飛ぶことができるのかと尋ねたら、適当なところではぐらかされた。
とりあえず空を飛ぶということは結構安い技だと言うことはわかった。
まあ、空を飛べなくたって日常生活には支障がないのは言うまでもない。