□月 ●日  No895 幻想郷の設備屋さん


巷では大寒の季節である。 要は年で一番寒い時期という意味だ。
同時に氷妖精が一番元気な時期でもある。 彼女たちは色々なところを凍結させてしまい
大迷惑の原因を作ってしまうのだ。


この日幻想郷の主要店舗や河童の工房に配管部材が納入された。
幻想郷の配管は今や幻想入りした鉄管が主流である。
顕界では錆などの問題から銅管にシフトしている。
何に使うのかというと、凍結によって破断した配管の修理である。


当然香霖堂にも配管キットが納入され軒先に飾られる。
霧雨のご息女が持って行くためだ。万引きとも言うが元々配管工事もやりますという霧雨のご息女のために
必要な部材である。 切ってあるねじ穴から水が漏れるのを防ぐシールテープも一緒に用意する。


本来水道配管の仕事は河童やいわゆる設備屋さんのテリトリーである。
なぜ霧雨のご息女が水道の配管工事をするのか。 香霖の話ではまさにこの時期にまつわる理由とのこと。
この時期の魔法使いは凍結した配管を溶かす魔術で荒稼ぎするのだ。


基本的に配管を凍結させる原因をつくる氷妖精を退治すればいい話でもあるので、霧雨のご息女のような武闘派魔法使いは
妖怪ハンターの仕事とセットで受けられてなおのこと美味しい仕事になる。
配管損傷が激しいときは霧雨のご息女が河城河童に依頼をかける場面もあるらしい。
二人の間に通信設備があるのは配管修理依頼のためという理由もあるのだ。 
通信設備が二人の間にあるのも元々地霊殿プロジェクトのためにあったのではなく
以前から開発していたものだというわけだ。


ふと疑問が湧いたので香霖にぶつけてみた。
氷妖精を買収すれば問題の少ない場所を凍結させて仕事を増やしつつ荒稼ぎできるのではないかと思ったのだ。
まさに自作自演である。
すると、氷妖精自身、痛いのは嫌だからあり得ないと言っていた。確かに言われてみたらそうか。


香霖堂にやってきた河城河童から銅管をいれてくれと言われる。
顕界で使っているから難しいと言ったら、けちけちするなと言われた。
そこに霧雨のご息女がやってくる。 かなりカオスな展開の予感である。


河城河童が霧雨のご息女にお前からも銅管をいれるように言えと言うのだが
いまいち理由がわからないご息女に三人で理由を説明する羽目になる。
するとご息女が一言こう口にした。


「直さなくてよい配管をいれたら みんなの商売あがったりじゃないか」


それもそうかということになってこの話はなかったことになった。
今日も香霖堂は色々な意味で平和である。