□月 ●日  No894 ストライキは自分をわきまえて


現地法人詰め所。 休日なので寮でごろごろしていたら河城河童に無理矢理起こされた。
月の都用ホットラインに綿月妹こと依姫が泣きついてくるというにわかに信じがたい事件が起こったらしい。
何事かと直接話したら、なんと兎たちがストライキを始めたらしい。


流れはこうだ。永遠亭の連中と通信していたらストライキで<遊んだ>という姫の話が出て
兎たちがストライキに興味を持ったらしい。
ライブ映像を見せて貰ったら私にはいつもの風景と全く変らないように見えた。
が、管理責任が問われるという依姫の言葉に思いっきり反応してしまった。
どちらかというと同志という意味で。


朝倉に許可をとってやってきた兎軍団の根城。
待遇改善と叫ぶ兎どもを尻目に一人一人説得工作を開始した。
まあやり方といったらとてもシンプルである。
連中の待遇がいかに恵まれているかをとくとくと説明するだけだ。


ずばり言おう、私の職場は朝8時半に出社して、帰宅は夜の9時だ。
兎どものように毎日さぼっていい職場じゃない。
周囲の妖怪から理不尽な注文を受けて、頑張って叶えてもあまり報われないときている。
それでも何とか仕事をやってられるのは、割とダイレクトに喜ばれるからであって
そうでもなければやってられないってもんだ。
そんな話をしたら何というブラックと兎たちに次々と同情された。


だが私と違うところもある。第一に兎たちには団体交渉権がない。
当然ストライキをする権利すらない。
ストライキをしたら解雇されるのは彼女たちだ。
そもそも月人たちはとびきりのレイシストだ。ぶっちゃけ兎たちのことだって本質的には消耗品または
愛玩動物程度にしかおもっていない。いや、寧ろ可愛いペットかもしれない。
どちらにせよ対等になることはない。
ならばその立場を利用すればよい。相手に優越感を与えつつも自分はちゃっかり利益を得るほうがいい。
兎もアホじゃない。そういう話をしたら成る程と納得して貰えた。


暫く説得し続けた甲斐もありストライキもとりあえず鎮静化。
実は飽きただけという事実は無視して帰還。
依姫が喜んで桃を持ち帰らせたが、大量にありすぎて暫く桃ばかり食べる羽目になりそうだ。