□月 ●日  No893 所場代くらいははらいましょう


幻想郷にいるからと言って人間の性根が変ることはないと断言できる。
口先で渡り合うものもいるし、チンピラの類や悪党だっているのだ。
ただ幻想郷の場合、あまり調子に乗ると妖怪たちに襲われる結果が待っている
ある意味当局なんかより怖い。


数万はいるという幻想郷に住んでいる人間達。
具体的な数字はよくわからないが、人口変動を加味すると総人口はそれ位と推測される。
それ位と書いたのは妖怪によって食べられる人間と外の世界から迷い込む人間に
よるものだ。 当然こういった人間の中にははみ出しものというのが混ざってくる。
彼らの仕事は幻想郷の裏社会を監視、取り締まることである。


夜雀の屋台で事件は起こった。
夜雀の屋台などにいつものように材料を持って行ったら
最近モグリの屋台が増えているという愚痴を聞かされた。
こういった仕事は勝手にやっているものと思っていたがそうではないらしい。


妖怪たちは基本的に「契約」に重きを置く傾向がある。
このシステムにより妖怪たちは人間達の経済システムに組み込まれてもきちんと
商売が成り立つのである。
同時にルール違反者に対しては情け容赦しない。
そして、容赦しない相手にはどこまでも残酷になれるのだ。


角刈りのいかにもという風体の男が、夜雀の元にやってきた。
「姉さん、例のモグリの店が分かりました」と言ったので思わず心の中で吹いた。
夜雀に姉さんはないだろう。 彼女の風体はどう見ても童顔そのものだからだ、


男に連れられて行った店では早くも沢山のギャラリーと共に喧嘩が始まっていた。
どうやらモグリの店の店主はスペルカードを使用できるらしい。
夜雀が何故呼ばれたのかここで初めて分かった。
スペルカードルールで負けることがあれば、店の出店を認める事になるのだ。


夜雀の能力は割と知られているが、相手の能力はなにも分かってない。
基本的に夜雀のほうが不利だ。 私みたいなノースキルなら他の相手でカタがついている。
そこで倒れている奴から情報を聞くことにした。
夜雀はすでに闘いを始めている。最初は互角だった戦いだが、何故か夜雀のほうが押されだした。
人間と妖怪の可視光線差を利用してフラッシュを炊いているからだ。
とりあえず夜雀が負けたら洒落にならないから「自分を鳥目にしろ」と
背一杯怒鳴った。 これで理解できる筈だ。


お陰で夜雀は辛くも勝利を収めることができた。
助言は卑怯だと言われたが、こっちは相手の能力を伝えていないと言ったらがっくり項垂れていた。
こいつがこれからどうなるかは知ったことはではないが、
夕方緊急の配達で中有の道を彷徨う野郎を発見したことから、無事あの世に送りつけられたと思われる
なーむー。