□月 ●日  No1429 同情はいらん


幻想郷の試食はしていながら鰻屋台を利用していないことに気づきお金を持っていそいそと
夜雀が経営している屋台に顔を出してみたわけだが。
さすがに丑の日を過ぎているせいか客の入りはピークアウトしており、大分入りやすい。
何時も貰うだけ貰っていて悪いので普通にお金を払って鰻重を食べてみた。


味の方は前にいただいた味のまま。当然と言えば当然だが、手を抜いていないことがわかって一安心。
相変わらず手間を掛けているなと褒めたら、手を抜いたらあっという間に看破されて客足が遠のくのだとか。
妖怪相手の商売だと仁義などが要求されるのでその意見には大いに賛同できる。


そんな屋台で、腕に大怪我をしている女の子を発見して思わず目がいってしまったのだが
何となく痛々しそうに見えて、ついついどうしたものかと思案していると、
こちらの考え方を察せられて「大丈夫ですから」と言われてしまった。
いくら何でも好奇の目で見る物ではないなと反省。


幻想郷の住人の場合、本当に怪我をしているのと怪我をしているように見せかけている者といるのは
ある程度知っておくべきだと思う。
包帯を巻いているように見える腕も何かしらの謂われがある可能性があるので、不用意に触れるのは
あまりよろしくない。 下手に触れてあの世に行ったらまた小兎姫辺りに大笑いされそうだ。
手を貸そうかと思わず手が動きかけたがすんでの所で躊躇った。 それこそ余計なお世話ってもんだ。
本人の自尊心に傷を付けかねない。


彼女が帰った後、彼女のことを簡単に夜雀に聞いたら修行中の道師さんとわかる。
あまり詮索しても仕方ないので、成る程と相づちを打ってから帰還。
とりあえず食べるものも食べたし、身体も少し軽くなったので散歩してから帰ったのだが
その辺の話を朝倉にしたら、声が少々上づっていた。
なにかまずい人物か妖怪と接触したというのだろうか。


たしかに彼女の服装はかなりお金が掛かっているようにも見えるから、それなりの金持ちか、
能力を持った妖怪変化の類とは思っていた。
話をした限りではまともな人物であると思うのでそれほど害があるとは考えにくいのだがどうなのだろう。
考えても仕方ないので今日のところは早めに寝ることにする。