□月 ●日  No896 ペットの帰還


長年霊能局やうちの会社を悩ませていた妖怪どもを売買していたブローカーが勝手に倒産してくれた。
高所得者向けに美少女妖怪を売買するという商売で、人権など各種要素を無視できる妖怪だからできたものだったが
肝心の高所得者が相次いで破綻して資金繰りに行き詰まったらしい。
手を貸せと言われたため仕方なく同行。 戦力になるのかどうかは分からない。


以前、この会社は橙の横流しをしていたが飼主が橙に殺されるなど色々トラブルが絶えなかった。
橙を利用した商売に失敗したこの会社が次に狙ったモノ、それがよりによって火焔猫や地獄鴉たちだった。
確かにやつらはペットだが誰が見ても人が飼うペットには向かない。
火焔猫は扱うものが扱うもので特にヨーロッパ圏では嫌われているし、地獄鴉は扱うモノが危険すぎた。
会社は存亡を賭けた新商品のつもりだったが売れなかったわけだ。
どうやら地霊殿からみということで特性をよく知る自分が呼び出されたようだ。


ペットは幸い若干飢えてはいたが健康状態は問題なかった。
地獄鴉に至っては若干スリムになったお陰でむしろいい感じになっていた。
虐待の跡もなくほっとする。 そんなことをした日には虐待した方が碌なことにならないからだ。
そこまでアホではないか。


とりあえず地獄鴉と火焔猫の団体さんを搬送。 霊能局の連中が護衛に当っているとはいえかなり五月蠅い。
連中に何があったかと聞いたら、仕事はしなくていいし色々な遊び道具があったから退屈しなかったと言っていた。
むしろ帰った後が憂鬱だと言われてかなり納得した。
食い物は若干量が減ったほかは概ね良好だったそうだ。
それよりも皆異口同音に言っていたのは地霊殿の主人が何というか怖いということだった。
彼女たちは長い間遊びに行っていた気になっていたからだ。 
仕事をさぼっていたから咎められると思っていたようだ。


列車内で地霊殿の主人と通信で話をしたのだが、概ね問題ないということでけりがついた。
今気がついたのだが、通信設備を経由すると心が読めないらしく地霊殿の主人の返答が若干混乱していたようだった。
あの表情はちょっと珍しいと感じた。
簡単に許すと逆にペットたちが畏れるので簡単な掃除を罰ということで与えることにする。
掃除をすれば無罪放免としたほうがペットたちの心理負担が軽減されるからだ。
単純に受け入れると、いつか罰を受けるのではないかとペットたちも心配になる。


とりあえず全員を地霊殿まで送り届けて仕事は終わったわけだが、
お菓子で餌付けされて攫われたという、皆の心を読んだ地霊殿の主人から聞いて色々唖然とした。
とりあえず餌を与えてはいけないの意味がわかったが、なんともはやであった。