□月 ●日  No897 八雲商事の待遇


うちの会社は割と遅くまで働かされることで有名である。
これはどうしても仕方ない部分もある。 かつては中間管理職狐の裁量一つで幾らでも
時間がずれた。幻想郷への門がいつまでも開かないことは日常茶飯事で、開くまでの間は
列車の中で寝ていることもざらであった。
この頃の体質が未だに残っているのである。 とにかく幻想郷は顕界のように分刻みで動いている訳ではない。
だからどうしても時間がのびのびとなる。結果的に遅くなり易いのだ。


このため残業代も一定時間を超えると支払われなくなる。
一応営業手当の名目で支払われるが、ほぼ固定額と言って良い。
早く帰っても給料があまり変らないのはいいことでもある。


朝はだいたい8時半過ぎくらいには出社していることが多い。
朝のミーティングは9時過ぎくらいで、配送予定や挙がってきた注文の確認を行う。
事務にメーカー発注内容を上げて、商管から商品の内訳書を貰うのが9時半、列車で移動開始するのは
10時くらいとなる。 幻想郷の基地局に到着するのは午後になる。
妖怪の活動時刻である夕方5時を基準とするのでこういうシフトになるのだ。


直接配達するものがなければそのまま顕界へととんぼ返りとなる。
月や地下へ移動するときは謎のワープゾーンを利用している。
綿月姉妹や隙間妖怪に感謝しないといけないだろう。


一度幻想郷へ行ってしまうと帰れるのはおおかた次の日になる。
帰らないで業務に残るという手もありで都度裁量権がある。
逆に顕界ばかりで仕事をする朝倉みたいな存在もいる。
基本的に二重生活みたいな状況になる。


さて実はうちの会社では自社の寮以外の外泊は許可制となっている。
妖怪の家に潜り込んであっさり餌になる事態が昔はよくあったらしい。
それだけ下心を持っている人も多かったとも言えるだろう。
実際妖怪たちははっとするような綺麗な人が多いのである。
個人的には綺麗な薔薇には刺があると考えているのであまり気を許してはいけないと思っている。


夜はだいたい9時くらいに終わる。
もっと早く終わることもできるが、妖怪たちと情報交換がてら雑談していていることも多く
駄弁っているうちに時間が過ぎることもある。
姫ちゃんが夕方にやってきて説法を始める場合もある。
大迷惑もとい大変有り難い。


夕食を会社で食べてしまうこともしばしばだ。
北白河が総菜を買ってきたり、朝倉が雑煮とかを作って皆で食べることもあるので
夕食代があまり掛らないのは有り難い。
遅くまで働かされるブラック企業ではあるのだが
わりと緩いところがあり、アットホームな雰囲気だったりする。


こんなところでないとやってられないのは事実である。