□月 ●日  No2291 どうなったかは想像にお任せします


顕界にいる妖怪たちが幻想郷に行くと言うシチュエーションは色々あると思うが、
実のところかなりハードルが高いのではないかと思う時がある。
最大の問題は妖怪もまた人間のもたらすインフラに乗っかっているという事実だ。
たとえ不便になっても幻想郷に行けば楽な暮らしができると言われてもなかなかうんと言えない事情がある。
生活苦でそもそも幻想郷に行くだけの財力がないなんて妖怪もけっこういる有様だ。


幻想郷の生活環境はどうしても漏れ伝わってくる。朝倉が同人誌を用いて幻想郷の情勢を伝える会報を書いていたり
幻想郷から顕界に帰還する妖怪によって幻想郷の状況がどうしても漏れ伝わってしまう。
更に言うと、顕界の生活に戻ったほうが暮らしやすいとしてそのまま幻想郷に帰還しない妖怪もいる。


この日幻想郷に行った妖怪ははっきり言って幻想郷の情勢について我々以上に知っていた。
主要な妖怪の名前も把握しているし最近起こった異変もわかっている。
それでも幻想郷に行こうとしたのは単純に借金で首が回らないからだ。
幻想郷に行けば大丈夫だと思っているようだが、幻想郷は一応法的には高跳び扱いになるので
債務の時効が停止されるというリスクがあることだけは説明しておく。


どうせ借金取りは幻想郷まで追ってこないとあってこいつは、顕界で最後の浪費に走ったらしい。
浪費した金を幻想郷に使えるようにするために色々なものを買い込んだと言っていたが
どうなるかは見当がつくからそれ以上は話を聞かない。


通常の携帯電話のアンテナが使えなくなれば幻想郷ゆきを示す合図だ。
八雲商事の場合は別のアンテナが接続される。
とりあえず、その妖怪を入り口におろし、彼が買い込んだ物資とやらの受け取り方法は示す。
食い物とか、電池とか色々あった。 幻想郷に送り届けるには早いと思うかもしれないが
本人はキャンプのつもりなのだろう。我々が暮らす場所を提案しても聞く耳を持たなかったから
放置する予定である。


さて、妖怪たちにお金を貸すような奴は同じように妖怪であることが多いのだが
この妖怪は今年中に逃げ切れるのだろうか。
たぶん持ち込んだ物資は彼らによって差し押さえられるのだろうなと思いつつ
今日も現地法人へと向かう。