□月 ●日  No1374 幻想郷事前体験


幻想郷の生活環境は外の世界に慣れきった人には過酷に映るようだ。
妖怪ですら、外の世界に慣れきった存在の場合は、不便さについて行けずに顕界に帰る
ケースが存在する。 
もちろん顕界にいればじり貧だから幻想郷へ旅だったわけだが
それほど幻想郷の生活は思った以上に楽ではないと言うのが実情だ。


人間を幻想郷に送るにも金が掛かるが、妖怪を幻想郷に送るのにも結構金が掛かる。
よく、地獄の沙汰も金次第と言うが、まさに幻想郷の沙汰も金次第だと思う。


朝倉や玄爺などはよく幻想郷に旅立ちたい妖怪達の相談に乗るという。
最近はネットの普及により、幻想郷生活の一端を垣間見ることができるようになっているが
それでも、妙なイメージがつきまとっていてそれがしばしば誤解を与えている。


曰く少女妖怪たちの楽園である。 曰くキャッキャウフフして一日暮らしていける。
そんなわけ無いだろと思うのだが、当人は至って真面目に幻想郷へ行きたいと思っている。
彼らに現実を教えないといけない。


そんな折り、幻想郷体験ができる疑似幻想郷空間をエミュレートする建造物を隙間妖怪が
作り上げた。 ここで一週間ほど暮らして大丈夫なようなら、幻想郷へ行けることになっている。
実際のところ、大半の妖怪が数日で脱落する。
妖怪も人間のインフラに結構乗っかかっているのだいるのだ。


ある妖怪はテレビも電気もないなんて知らなかったと言っていた。
電気屋で見るワイドショーがこの妖怪の情報源だと聞いたら、普通の人間と
どういう違いがあるのだと思う。


この仮想空間による幻想郷体験だが、これにはもう一つ重要な目的がある。
それは博麗の巫女の脅威 もとい 存在を知らしめることである。
ここで博麗の巫女に対する恐怖を味わえば、大体の妖怪は幻想郷に行っても
異変すら起こそうと思わないのである。
実際、弾幕を知らない妖怪が多い顕界にあって目の前いっぱいに広がる
触れたら死にそうな弾幕を見れば、腰を抜かすか、思わず失禁するとか
足がすくんでうごけなくなるとか そういう反応になる。


ある妖怪は、幻想郷は良いところだと思っていたが、生活する場所もないし
ネカフェもないし、日雇いのバイトも少ないと言って幻想郷行きを断念していた。
決して笑い事ではなく、それが顕界にいる妖怪の実情だったりするのである。

実際ここを体験して幻想郷に旅立った妖怪は全体のわずか3割程度だと言われる。