幻想郷に家を構えている社員の引っ越し作業を手伝ってみる。
基本的に引っ越しのシステムに大きな差は無いのだが、扱う荷物には少々特徴がある。
まず引っ越し荷物の中に畳があると言うことだ。
以前にも取り上げたことがあるが、幻想郷における畳サイズは規格化されており
どれも同じサイズとなっている。顕界における関東畳とその辺が根本的に違う。
畳の床は概ね半世紀持つので、引っ越しの際には一緒に持って行っているというわけだ。
幻想郷の畳は顕界のそれと違い、極端に重い。
それに重量を軽減する御札を貼ると、ほんの少しだが浮き上がり人一人で
簡単に移動できるようになる。
風に煽られやすくもなるので扱うときは注意である。
幻想郷では基本的に物資に限りがあるので引っ越し荷物も畳以外は
とても少ないのが実情だ。
それだけ外の世界は物があふれていると言えるだろう。
さて、幻想郷にも顕界にもある風習が引っ越し蕎麦の存在だ。
そもそも蕎麦は金が産出される幻想郷でこそ意味がある。
実は蕎麦は飛び散った金を付けるための「とりもち」として利用されていた。
そもそも幻想郷ではそば粉に熱湯を掛けて食す「そばがき」のほうがポピュラーという
事情もある。
そのため蕎麦は金を萃める縁起物として認識されているらしい。
そんな蕎麦をみんなで食すことで共同体としての連帯感を高めるというのが
引っ越し蕎麦に込められた謂われというわけだ。
この辺は顕界でもあまり変わらないと言えるだろう。
余談であるが、実は引っ越し蕎麦の風習は博麗大結界完全分離直前に流行った
風習であり、実はそれほど歴史が古いものではないらしい。
食い物にありつけるなら問題ないというアバウトな理由でこの風習は
生き残ったと言われる。
とりあえず何もトラブルなく物の移動は終わったが
予想以上に短時間で終わってなによりである。
やはり平屋建ての幻想郷は荷物運びには楽である。