□月 ●日  No1040 コロンボと呼ばれた八雲商事社員の手記2


結構前の話なんですけどね、うちの娘がですがね、なんで勉強しないといけないのかって聞くのですよ。
もうそんな年齢なんだなと感無量になったのはいいのですけどね。
親としてどう答えていいか分からなくなって仕方なくボスに相談したのですよ。
永く生きてきた妖怪としてどう答えるのか個人的にも興味があったんですよ。


するとですねボスがですね、こう言うのですね。
勉強するのは、「良い縁を得るためのもの」
縁次第で人は身を崩すことも身を立てることも出来るって言うんですよ。
妖怪はずっと一人で行動して一人で全てを賄うものだと思っていたのですけどね。


他の国の人と話が出来れば、何かあったとき助けて貰えるかも知れない。
頭が良ければ、損をしないように立ち回ることだってできる。
でもなにか辛いとき大変なときがあったら、縁を頼ることができる。
家を建てるなら大工さんを、体調を崩したらお医者さんをってね。


そんな娘も大学を卒業して、就職したんですけどね。
うちの会社じゃないけどふつうの会社に入社することが出来たんですよ。
氷河期と言われている世の中だけどとにかく手に職を得ることができれば上出来だと思うのですけどね。


そうしたら娘、勉強する理由を教えてくれた人に渡して欲しいって、
綺麗に包装した箱を渡しましてね。 いやはや、ばれていたんですね。 誰かの受け売りだって事。
もちろんボスに渡しましたよ。 彼女ちょっと嬉しそうでしたよ。


あとで知ったんですけどね、実はうちの会社志望して落ちていたんですね。
入社したら大変だって事は私自身よく分かってますし、命がけの仕事ですからね。
親不孝な目に遭わないようにってことでしょうか。 
この話かみさんに話したら大笑いしてましたよ。 私は苦笑するしかなかったですけどね。