□月 ●日  No1090 魔界とお盆


地下世界の夏休み。 地下世界にも盆休みがあるというか、幽霊たちが帰還するので
地下世界も概ね暇となる。 当然殆どお休みということになるわけなのだが
何故私はお盆でも休みじゃないのだろう。
せめて代休でも貰いたいところだ。


この日、地下を訪れたのは魔界に用があるからだ。
商品を届けるがてらに色々と話を聞くことにしている。


魔界の位置は常に移動しており、納品の時には列車を丸ごと魔界に転送させることで
侵入することが可能である。
移動している理由は割と単純、地下水など季節に応じて場所を変えるこれら
地下資源に会わせて移動しないといけないからだ。
寒ければ熱源の近くに移動すればいいし、熱ければ地下水脈の近くに居を構えればよい。
もっとも施設そのものの移動にはそれなりに長い術式を組むらしく
間に合わなくて水浸しになることもしばしばだ。


魔界とお盆は決して無関係ではない。
魔界神は魔界という禍々しいイメージからかけ離れた何かを生み出す能力を持つ
異色の存在である。 


しかし最初から高等な生き物を生み出せたわけではない。
様々な生き物が持つ命のノウハウというものがあって初めて可能だと言われる。
だからこそ先祖を敬わなくていけない。


今日の自分が何かの上に立っている事を理解しないといけない。
面白いのは西洋でもここでも似たような風習があるということだ。
それは決して偶然ではない。


しかし、物を生み出すと言うことは即ち代謝と共に行われる。
生き物が一番嫌がるイメージである死もまた魔界と共にあることを理解されたい。
だから「魔界」というネガティブなイメージで語られるのかも知れない。


魔界の智恵は幻想の世界と顕界を結ぶ上でとても重要な物であると思われる。
機会があれば一度足を踏み入れるのも悪くない。
駄目なら魔術でその一端を見ることができるので興味があったら
試しても悪くないかも知れない。


ただし今は休みなので人員が少なく退屈なのは理解して欲しい。