□月 ●日  No1137 取り越し苦労


現在住所不定無職の聖大師様。とりあえず彼女の戸籍を復活させるべく動き出すことになった。
年齢を幾つということにするかで色々揉める。
幻想郷で戸籍と言われると違和感を感じるかも知れない。 そもそも戸籍制度は税金を
正しく徴収するための制度だからだ。


しかし幻想郷で戸籍をきちんと把握するのは意味がある。
一番大きいのは食糧不足状態の把握である。 こと幻想郷では食糧不足が発生しないように
細心の注意が成される。 食糧不足は社会不安を招きただでさえでも閉鎖空間である
幻想郷を容易に崩壊に導くからである。


驚くべき事に聖大師様はそれらの要素をいとも容易く理解してくれた。
個人的に心配だったのは、あまりに長い期間封印されていた事による文明ギャップだった。
自称現人神の件ではそれで多いに苦労したからだ。
しかし自称現人神の件では昔の生活環境に戻るという意味で難しいが今回は全く反対である。
聖大師様や船長たちにとっては、今の生活は想像を絶するSFの世界に身を置いている感覚なのだ。
よって我々としては彼女たちの時代の風俗を学んだ上でその当時の言葉に置き換えて説明する
必要があるということになる。
あとは彼女たちの理解だが、コンピューターなど一体どうやって説明して良いのか分からないのである。


そういうことで戸籍制度についても当時の言葉色々説明しようと試みたら、まだるっこしいと
言われてしまった。
コンピューターの概念も最初から理解しているようだった。衣服の話をしたら、自分の衣服に
時代が追いついたと言われた。 確かに言われてみればそうかもしれない。
逆に、発掘船の自動操縦システムについて説明を受けることになってしまった。
彼女たちはすでに思考する機械に触れていたということである。


朝倉に何故彼女たちの理解力が想定外のレベルになっているのかと質問すると、
そもそも聖大師が使っていた魔法や発掘船があちらの技術だからと言われた。
あちらと言われて指さされた先には月があった。


結局戸籍に書く年齢表示は朝倉と聖大師のすったもんだの遣り取りの後、同じ年齢で表記することで
折り合いがついたことだけ記しておく。 船長の年齢がずいぶん若い表記になっていたが
まあ、外見で決められたんだろうなと思う。
全く難儀な話である。