空から落ちてきた妖精に危うく衝突しかける。
千鳥足ならぬ千鳥飛びみたいな飛び方で危ないったらありゃしない。
幻想郷の妖精は本当にお酒好きである。
外見の幼さに騙されてはいけない。彼女たちのお酒に関する執着心はかなりのものだ。
しかし満足な所得もなさそうな妖精がどうやってお酒を手に入れているのか。
もちろん悪戯のプロセスで盗み出すケースはあるもののどうやらそれだけではないことが
分かってきた。
メトセラ娘によれば、森の中を探索すると妖精たちが岩の窪の中にため込んだ果実が
酒になっている場所があるらしい。 人間が呑むと危険なお酒であるが、死を畏れなくてよい
メトセラ娘や妖精たちは好んで呑んでいるようだ。
これを一般的には猿酒と呼んでいる。
幻想郷ではカミ様の作用などでこうした神酒の発生スポットが幾つかあって、それらを呑んで
命を繋いでいる妖精がそれなりにいるらしい。
つまりはこうだ。
食糧不足のプロセスで果実をため込んで後で食べようとした者がいた。
しかし果物は自然発酵し、上澄み液ができた。
飢えた者はそこで初めて発酵した謎の液体の味に触れたことだろう。
それが美味しいと感じるまで大して時間はかからなかったと言える。
余談であるが、例の神社のお姉さんなど古いカミ様は果実酒を好む。
これは単純にコメの伝来前に既にお酒が流行っていたことを意味する。
八岐大蛇がお酒で酔った隙に日本武尊に討伐されてしまった話があるが
そこで大蛇が呑んだのも果実酒だと言われる。
幻想郷で相手の好みの酒が分からなければとりあえず果実酒を持っていけば
恥をかかないで済むだろう。
墜落してきた妖精だが、口の周りについていた果物のかすかな臭いから
そんな果実酒を飲んで移動したと思われる。
大迷惑なことではあるのだが、彼女たちは彼女たちなりに必要だから呑んでいることくらいは
理解したいところである。