□月 ●日  No1185 ゲイツ記


今から約半世紀前のことだ。 人類は地球外生命体がいるかもしれないという事実に
気づき始めた。 それは人類にとって大いなる一歩である。
地球外の生命体を認識できること。 これができるようになって我々は外宇宙の知識に
触れるための第一段階をクリアーするに至った。

アポロ計画。月の探索。 そして彼らとの遭遇。
月人の存在が発覚したことは人類にとって幸運だったと今になって思う。
人類の終末時計が回っていた20年前、彼らの存在がいなければ宇宙開発の協力関係も
雪解けも起こらなかったと言い切れるだろう。


問題は、この地球上で最も近い天体である月に知的生命体が存在していたことだ。
それは場合によっては、地球が彼らに侵略されるリスクを常に抱えることになるということだ。
報道するわけにはいかなかった。 映画などのメディアを通して存在を意識させることはできるが
直接的な発表は、かつてのパニック事件以来禁じ手とされている。


私は月面人が地球上に対して領土的野心が無いと断言できる。
もし彼らが領土的野心を持っていたらすでに実行に移しているはずだ。
さらに人間が宇宙人を知覚できるようになったことも重要な要素だ。
彼らにしておけば人間は無知のままにして置いた方がなにかと都合がいい。
そして、これは我が国にも言えることだが、占領統治はお金と人員がかなりかかるということだ。
当然レジスタンス活動も予想されることからどうしてもそれは割が合わないことになる。
それは現代の中東情勢をみれは明らかなことだ。


我々にとって月面人との正しいつきあい方とは、彼らの行動を逐一監視して
得られる物があれば、しっかりいただくことだろう。
彼らの技術を得ることは莫大な基礎研究コストの削減になるだろう。


最近、魔物どもが月面に対して何かを企んでいる。
我が軍の諜報部員だった永江衣玖が八雲商事の手に落ちたため、我々は別の情報ルートを探さないといけなくなった。
魔物どもが月面に攻め入るとあるが、規模的に一個小隊程度の輸送と判明したので、月面人に情報をリークして
恩を売った方が良いと考えられる。
それが人類にとって大いなる利益につながると考えられるだろう。


エーリッヒ博士の娘を拉致した犯人が判明した。
現代に生きる始祖魔術師の一人と考えられる。 
現在、自らの解放を条件に人質交換を要求している。 
博士の開発した完全版Vivit級ヒト型兵器の開発が待たれる。
試作型の出力は初代Vivitと比較して倍増しており十分な戦果が期待できるだろう。