□月 ●日  No1215 阿礼の発掘品


一足お先に阿礼乙女の邸宅の大掃除に取りかかる。
この日うちのスタッフ数十名が邸宅入り。 庭の掃除は専門スタッフに任せ
倉庫内の整理をすることにする。


倉庫とはすなわち幻想郷縁起の保管庫のことだ。
阿礼乙女のその当時の見解が幻想郷縁起には納められている。
阿礼乙女の記憶力をもってすれば、本来幻想郷縁起という書物は不用である。
しかし、物事の価値観は月日と共に移り変わるものであり、
その当時の価値観もまた保存対象となることから、このような倉庫が必要となるのである・


永遠亭と同様の建造物保存技術が用いられているらしい。
なぜ阿礼乙女の邸宅に月人の技術が投入されているのかは置いておいて
増え続ける幻想郷縁起の収納場所を上手い具合に整理しないといけないのは
毎度のことながら面倒な作業である。 もうちょっと便利にならないのだろうか。


なぜこんな事態になるのかというと、幻想郷縁起とセットで
阿礼乙女が幻想郷縁起を書く際に用いた様々なアイテム類も
一緒に保管しているからなのである。 これが倉庫内のかなりの面積を占めており
縁起の保管を最優先するために一部アイテムを一度外に持ち出す作業が必要となる。


アイテム類は解析の後うちの会社の専用倉庫に保存することになっている。
この日運び出されたアイテムは、4代目が口述筆記に使用していた代物だそうだ。
永遠亭で行われた月都万象展で展示されていたものとほぼ同様のものだったため
すぐに使い道がわかったのである。


阿礼乙女は幻樂団が詩として残した歴史を録音しと述べていたが、どうやら
これこそがその録音装置と言えそうである。
おそらく寿命間近の阿礼乙女の記憶を保存するために利用したのであろう。
次の転生時にも使えるようにと保管したのだろうが、肝心の使い方が
伝承されずにこうして残ってしまったと考えられる。


アイテムを見た阿礼乙女がとても物悲しそうに見えたのはきっと気のせいではないだろう。
使い方を覚えてないかと尋ねたら、「覚えるのを忘れた、一生の不覚」と言って苦笑していた。


この日外に運び出されたのは十数点。 月由来のアイテムもあるようなので
月の都に運び出して使い方を聞くことになっている。
河童に見つかって解体されないように気をつけたいところである。