□月 ●日  No1409 その名は七夕


河童の工場 今日も機織り機が昼夜問わず動いている。
この時期、お盆に向けて着物製造の最盛期であり、河童達もここぞとばかりに工場を
全力で動かしている状況だ。
なぜ今日この話をしたのか? 実はこの機織り機こそ「七夕」である。
七夕との由来となった機織り機は、河童により改修され、顕界に大とも劣らない
高性能な機織り機となっている。


機織り機というとどうしても手で操作するような手動操作のものが想像されるかも知れない。
しかしながら何故こんなに機械化されたのか?
これをどうも発注したのはなんと織姫自身だというのだ。


昨年同様この手の話題に詳しい魂魄によれば、織姫と彦星の問題同様、織姫は恋をするたびに
機織をサボっていたのだが、ただサボっていれば彦星の件になりかねない。
そこで仕事をさぼりつつ、成果物は残すということで自分の作業工程を式神化することを
思いついた。 現代におけるプレイバック型ロボットである。
織姫の動きをトレスダウンし、同様の生活物を作るというのだから恐れ入る。


当時地上にいた月の民達を騙しもとい説得し、このような代物を作ったのだとか。
それがどうして河童の手の内に入ったのかは分からないがそんな代物だという。
これによって織姫は多少仕事をさぼってもばれにくくなったのだが、
同時に天衣無縫のエピソードのような展開も頻発したらしい。
織姫がその後どうなったのかは分からないが酷い話だと思う。


それにしても事情を知らない地上の民は織姫と彦星が無事出会うように短冊に願い事を
書いているのは酷い皮肉だ。 願い事を書かせて叶えることでより謂われが大きくなることを
考えるとどう見ても嫌がらせなのではないかと思う。
かくして、七夕は動き続け、願い事は空を飾るのだ。


うちの会社でも色々な願い事を短冊に書いているのだが、
まあとりあえず無事で仕事ができますようにと願い事を書いておいた。
強いて言うなら普通の彼女が欲しいというのもセットにしておいた。
みな思い思いに願い事を書いているが、呼んだら色々突っ込みどころ満載なので
あまり深く関わらないことにする。