□月 ●日  No1426 うちは古物商じゃねえぞ


身なりの良さそうな人がうちの会社を訪ねてきてうちのボスへ取り次ぎを要求するも
たまたま会社に人がいなかったので仕方なしに私が応対することになる。
その人物は役場の職員を名乗り、名刺を差し出した。 
得体の知れない木箱を大事そうに抱えているので何かと尋ねると、大変珍しいものであり
去民芸品を買いあさっている当社なら引き取ってくれると思ってやってきたらしい。


最近、財政的にピンチな自治体がうちの会社に変な謂われがあるものを引き取らせようと画策しているらしい。
第三セクターで建てた博物館が予算不足で維持できなくなって、展示物を現金化したいとかいう意図があると
思われる。 最近は維持費が掛かる展示物を引き取るような人も居ないから気持ちは分かるが、うちは廃品回収
業者じゃないんだと言いたいところである。


この前も河童の腕だとか称した箱に保管されたミイラを持ってこられたのだが、
実際に河童を見ている私としては「こんな腕をした河童はいねえ」と声を大にして言いたくなるわけで
こういうインチキな代物がまかり通っているのだから色々恐ろしい話である。
実際この手のものは詐欺師が広めたものを後生大事に保管しているうちに違う謂われがついてしまっているケースが
殆どだったりするのだから始末が悪い。


仕方ないので里香女史に鑑定を回しておいたけど、その後動きがないところを見れば大した代物じゃないと
推測できる。 買っても二束三文といったところじゃないだろうか。
うちの会社にはそういう鑑定スタッフが存在しており、妖怪の識者と考古学者、科学者たちの混成部隊となっている。
MRIやCTスキャナまで持っているらしく、かなり本格的な鑑定部隊として知られている。


幻想郷に古物を送る際はここで事前診断をする場合も多い。 特に紅魔館などに持ち込む場合は変な謂われがあると
迷惑が掛かるのでかなり慎重になる。
最近は、多少の謂われくらいなら力尽くでどうにかできることも分かっているようだが、それでも
彼らの仕事は無くならない。


購入元に返却しようとしてもこの手の代物の場合、購入元そのものが何処かへ消えているケースも珍しくない。
まさに会社が幻想入りである。
しかしこの手のインチキ展示物は幻想郷に持ち込んだらどう反応されるのかとても気になる。
すぐに看過されて廃棄されるのがオチじゃないかと北白河に言われたが、博麗の巫女あたりなら
そんなものを無視して見せ物にしていそうな気がしてならない。
巻き込まれた妖怪はたまらないだろうが。